滝の中で聞こえた「ヒト」の声
2017-07-17 怪異
雪解け水の季節や、夏の降雨期を終え、水が少なくなった滝を登っていた。掌に吸い付く一枚岩の乾いた冷たさが心を浮き立たせ、指先に感じる小さな窪みが何とも気持ちよく、気温や湿気、光る空気が心地よかった。水が少ない滝はルートに幅 […]
2017-07-17 怪異
雪解け水の季節や、夏の降雨期を終え、水が少なくなった滝を登っていた。掌に吸い付く一枚岩の乾いた冷たさが心を浮き立たせ、指先に感じる小さな窪みが何とも気持ちよく、気温や湿気、光る空気が心地よかった。水が少ない滝はルートに幅 […]
2017-07-06 神
昔、聞いた話。舞い落ちる雪の粒の中に、極くまれに、木の葉型のものがある。それを風文と言う。風文は、人肌に触れ、融ける瞬間、声になる。それは、山で遭難した人の今際のきわの言葉。はからずも死者となり、魂は黄泉路を、身は山路に […]
2017-06-30 心霊
村役場の女性職員に聞いた話。村の女性数名で、山の麓にある小さな墓地の草を刈ることになった。普段はほとんど訪れる者もなく、鬱蒼と生えた夏草が人の背丈ほどに伸びている。中腰になって手鎌で草を払っていると、耳元で子供の笑い声が […]
2017-06-17 怪異
知り合いの話。彼はムシャクシャした気分になると、独りで山にこもる癖があった。その日も彼は一人野営をしていた。仕事の上で同僚と衝突して、彼は短気を起こして口論になったのだ。いつものように独り言を呟き始める。一種の儀式みたい […]
2017-06-16 怪異
百発百中の精度を持つ彼だが、その能力が全く働かなくなってしまった事がある。それは霊峰とよばれるとある山に登った時のことで、彼は晴れると思っていたのだが、激しい夕立にやられ、あげく霧に迷ってにっちもさっちもいかなくなってし […]
2017-06-15 家系
もう8年位前に体験した事。山の中で迷い、山道を求めて右往左往していた時のことだった。散々歩き回って疲れてしまったんで、冷静になろうと石に腰をおろして休んだ。すると、どこからか「おっかあ~どごにいるだあ~」という声が響いて […]
2017-06-15 怪異
友人から聞いた山の怪異。2年前のこと、友人が東京から新潟まで原付で単独旅行をしたそうだ。道中、山奥に差し掛かった所で夜がとっぷりふけた。近くに泊まれるような旅籠も民家もない。仕方なく友人は近くの崖にあった横穴に身を寄せる […]
2017-06-13 怪異
彼は学生の頃、映画作りに嵌まっていたという。サークル仲間と一緒に、短篇ホラー映画を製作していた時のこと。訪れる者とていない、ある山奥の廃村を舞台にしたそうだ。撮影に入って二日目の夜、ある鳴き声が皆の目を覚まさせた。 ワ […]
2017-06-02 心霊
知り合いの話。彼の実家の山村に、歌う橋があったのだという。夜中にそこを通りがかると、橋の下から軽やかな歌声が聞こえてくるのだと。彼自身はよくある怪談だと思っていて、まったく信じていなかった。 しかしある夜、彼も実際に歌声 […]
2017-05-29 怪異
郷土史家の話。地元の山中に、小さな古墳があるのだという。古跡と言っても、こんもりとした土山から大きな石が幾つか顔を覗かせているだけで、一見ではそれと気が付かないような代物らしい。そこに近よると、すぐ耳元で声がすることがあ […]