【学校の怪談】戦時中の老婆の霊が出るという鬱蒼とした学校の裏山の中にある曰く付き神社

私の通っていた小学校の裏手に、雑木林に半ば埋もれているような神社がありました。鬱蒼とした木立に囲まれている上、校舎の陰になっているので昼間でも薄暗かったせいか、そこでの思い出は常に曇り空の印象です。そういえば真夏でも深閑として、蝉の鳴き声とかもなかったような…。

私が低学年の頃にその神社の清掃を、ボランティア活動の一つとして、隔週で行っていたのですが、いつの間にか行われなくなりました。噂では、ある学年が、その神社で記念写真を撮ったところ、築庭の大石に見知らぬお婆さんがしがみつくように写っていて、その写真を撮った日以来、その学年の生徒や先生の身の回りに事故や不幸が多発したから、とか。真相は分かりませんが、ちょっとしたタブーになっていたのは事実です。

そうそう、戦時中、空襲に焼け出されたお婆さんが、その石のところで息絶えた、というのが、まことしやかに囁かれていました。それ以外、例えば“四つん這いのお婆さんが時速50キロで~”といったような如何にもな話は無かったですね。そういう茶化すような話は許されないような雰囲気でした。神社は校舎の廊下から見えたのですが、皆、目を向けないようにしていたくらいです。

六年生の時、ノリオとカミヤに、その神社で肝試しをする事を持ちかけられました。カミヤは小学校の近くに住んでいて、神社なぞは遊び場の一つ、何も怖いことなんか無い、と言い出したことがきっかけだったと思います。私は神社に言い様のない禍々しいものを感じていたので、憶病者と罵られながらも、拒否しました。その代わり、校舎3階の廊下から、二人が神社を廻ってくるのを見張ることになったのです。

日は暮れかけていました。夕焼けに赤く照らされた誰もいない廊下は、泣き出したいくらいに無気味でした。ノリオとカミヤは手を振って神社の暗がりに消えていきました。心細く神社を眺めていると、やがて下校の合図、ドボルザークの『新世界より』が流れはじめました。距離を置いて一人づつ歩くことになっていたのでしょう、やがてカミヤが姿を現しました。こちらを向いて何か言っています。続いてノリオがやって来ました。私は、これで役目は済んだ、と廊下を駆け出し、二人に合流しようと学校を飛び出しました。

二人を見つけ、駆け寄っていくと、ウァアーッと叫んで逃げていきます。私は、肝試しに参加しなかったことで嫌がらせをしているのだろう、と思いました。翌日から、そして卒業するまで、二人は教室でも私を避けるようにしていました。

中学校に進んでからしばらくして、ようやく二人とも口をきくようになりました。私の方からは、あの肝試しの話題は避けていたのですが、ある日ノリオが、「今だからようやく言えるけど」と前置きして、こんな事を言いました。あの時、校舎を見上げたら、たくさんの恨めし気な顔のお婆さんやお爺さんが、私を取り囲むようにして廊下にずらっと並んでいた、と。

メールアドレスが公開されることはありません。