F県の田舎町の田園畑に、ひっそりとある墓があります。約140年前、丁度江戸時代の幕末期、この県は(藩)他の県と争っていて、戦場となっていました。この墓の下に眠っているのは、この戦で戦死した18歳の若い武士だそうです。(名前は忘れてしまいました)
その人には、婚約者がいて名をお楽と言い、17歳でした。日近くに祝言を挙げる筈だったのに、夫が戦に出る為に延期になってしまったのです。そして、しばらく経った時お楽の耳に夫は戦死したと届きました。お楽は悲しみに溺れ、夫の敵を恨み続けて生涯を終えたようです。その悲恋話は、地元の人は勿論、段々と他の人にも行き渡り、ちょっとした観光地になりました。
その話を聞いた、K県に住んでいる17歳の綾香さんは、早速F県に訪れました。お墓を見つけ、綾香さんは目を瞑って拝みました。と、その時背後に何か寒気がしました。綾香さんはそんなに気にしていませんでしたが、どんどん寒気が迫ってきます。
「…夫…の…仇」
小さく呟いた声が聞こえました。
さすがに綾香さんは怖くなり、拝むのを辞めて「誰!?」と叫びました。
それでも相手は「仇、仇…」と呟き続けます。綾香さんは思い切って後ろを振り返りました。すると、後ろには…。青白い肌、ボロボロになった着物、崩れた髪の…明らかに現代の人とは違う容姿でした。綾香さんは恐ろしさの余り、声も出なくなりました。相手は短刀を持っていたからです。綾香さんの体が動かなくなりました。もがいても、もがいても動けません。相手は綾香さんを短刀を振りかざしました。
「ふっ、あっははは…!」
相手は不気味な高笑いをしました。綾香さんを殺したのは、お楽でした。何故戦に関わりの無い綾香さんを殺したのか、それは…F県が当時争っていた敵は、綾香さんの住む、K県だったからです。その事が起きて、K県から来る観光客は激減しました。