20年くらいまえ家の居間で、家族みんなでテレビをみていた。晩御飯食べたあとだから八時頃か。当時小学生だった弟が急に立ちあがり、電話に向って歩き始めた。弟は自分から誰かに電話するようなことはまずなかったので、誰に電話するんだろう、と家族みんなでなんとなく弟の方に注意をむけていた。
すると弟は受話器を取ると番号も押さずに誰かと話し始めた。
「え!?そうですか。はい」
弟はそれだけ言って受話器を下ろし、こちらに向いた。
「おばあちゃんが死んだって」
僕らは慌てたが、祖母のいる病院に念の為に電話してみると、ついさっき、それも5分くらい前に息を引き取ったと告げられた。病院の事務員のほうが驚いていた。これから電話差し上げようとしていたのにと。
僕らはなにがなんだかさっぱりわからず弟を問い詰めたが、やつはきょとんとしてこういった。
「だって、電話が鳴ってたのにだれも出ないから僕が出ただけなのに」
もちろん僕らは誰も電話のベルなんて聞いてない。それで誰からの電話だったのかと聞くと、
「わかんない。知らない女の人の声で『おまえのおばあさんが死んだよ』っていわれた」
我が家ではそれ以来弟が電話を掛けようと立つたびにビビリます。