13年ほど前の話です。
当時、僕は5階建てのビルの五階の部屋に住んでいました。町中のビルで、窓を開けると小さな路地をはさんで、すぐ向かいにも同じようなビルが建っていて、そこにも人が住んでいます。僕の部屋の向かい側には、4.5メートル程離れベランダがあり、そこにはおばあさんが住んでいました。偶に、ベランダの花に水をやったりちょっとした洗濯物を干したりしていた姿を見掛けたから知っていました。
冬の初めの時期。僕は学校から帰ってきて疲れて部屋で寝ていました。外方が妙にざわついていることに気がつき起きました。窓を開けて下の細い道路を眺めてみると、5、60ぐらいでしょうか?人だかりができていて、なにやら騒いでいます。僕は眼が悪いのでメガネをとって来て改めて見ると、おばあさんが人だかりの真ん中で倒れてるんです。頭のあたりには真っ赤な血が道路一面に…。そして、向かいのベランダには普段は見ないような、中年ほどの男の人たちが何かしています。家族の話によると向かいのおばあさんがベランダから落ちたと…12月のどの週かわすれましたが、月曜日でした。
それからその週、ぼくはおかしなことに朝早く、それも5時ごろに目が覚めるんです。まだ暗い時間なのですが、ぼんやりと明るくなっているような時間。ふと、窓を開けて下の方を見てみると、あのおばあさんの落ちたところに、よく飛び降りた人の人型を警察がなぞる白線がありますが、それがみえます。
まだ消してないのか…とちょっと不気味でしたが…そして、向かい側のベランダをみると、もうそこには花もなにもおいてなく、人の気配はすっかりなくなっていました…。そんな感じでなんとなく変な気分だったんですが、その週はずっと、金曜日まで朝になぜだか目が覚めるんです。
金曜の朝、同じくぼんやりと明るくなって来たころ、僕は目が覚めました。またか…とおもいながら、なんとなく部屋のカーテンをあけ、窓を開けると…目の前のベランダにおばあさんが立って、下を見ていました。自分の落ちたところを。
瞬間的にやばい、と思いカーテンをしめました。ちょっとたって恐る恐るカーテンをあけたらもうだれもいませんでした。いまだに不思議です。