僕は関東某所の別荘地に別荘を持ってます。僕の別荘の周りは結構深い森と、未舗装の山道に囲まれています。飼っている犬を連れて散歩するのが別荘に行った時の僕の日課です。
10年近く前の7月、僕の別荘から200メートルほど離れた場所にある別荘(僕のと比べたら豪邸です)が火事になり全焼してしまいました。別荘の管理事務所に訊いたところ、御家族でいらしていて、天ぷらを揚げていたら油に引火してしまったとの事でした。幸い誰も怪我などされずに済んだのですが、焼けただれた豪邸ってのはなかなか不気味なものです。森の中で真っ黒な廃墟を見るのは余り良い気分がしないので、散歩コースからは敢えて外していました。
そして、9月下旬の夕暮れ時、犬を連れて山道を歩いていたら、立派なキバを生やしたイノシシとうり坊に出くわしてしまいました。親イノシシがゴフゴフと唸り始めたので怖くなり、普段通らない道へと逃げ込みました。家へ向かい、その道を進んでいたら、焦げ臭い臭いが漂ってきました。ハッと思い森の奥に目を凝らしたところ、もう一本脇の道に例の廃墟がありました。
好奇心も手伝って、わざわさ廃墟へ向かい、二階建ての廃墟の正面から中を眺めていました。ふと二階を見上げた時の事でした。ベージュのジャケットを羽織った女の人が二階の大きな窓口から僕を見下ろしていました。びびって一瞬顔をひきつらせてしまいましたが、幽霊とも思えない程リアルに存在していたのでペコリとお辞儀をしてからそそくさと立ち去りました。
後で訊いた話ですが、あの別荘が焼けてから直ぐ、ご夫婦は離婚してしまったそうです。奥さんが火事を出したのが離婚の原因だとしたら、あの焼け跡で何をしようとしていたのか?まさか自殺?などと考えてたら、益々散歩コースが限定されてしまいそうです。心霊体験じゃなくてゴメンナサイ。でも激怖かった~!