深夜のホームに佇む少女

この話は誰にも話した事はありません。実際に話したとしても信じてもらえないのと自分では幽霊のたぐいは信じていないからです。私には過去4回の目撃があります。その中で今でも決して忘れられない事をお話しします。

今から数十年前、当時東京の下町の京成線の荒川駅(今では名前が八広に変っている。)の歩いて5分くらいの所に住んでいました。ちょうど川の土手の上に駅があり川と駅の間に1本一方通行の道があり踏み切りとなっています。その踏み切りから数メートル先にはホームがあります。

その駅には特急は止まらず通過します。普通の駅では上りか下りに乗ろうとすると階段を上ってホームに降りますがなにせ小さな駅なので改札横の踏み切りを渡ります。よくある事故は朝下りの電車に乗ろうと急いでいる時、なかなか開かない改札横の踏み切りを無理に横断して特急電車に跳ねられるというものです。私が知っているだけでも5~6件はあると思います。

あれは2月のとても寒い日で、午前1時を過ぎたころでした。その日に限って仕事で遅くなり、私は急いで帰宅しようとしていました。車で通勤していたのですが、自宅と駐車場は駅を挟んで対岸にありました。朝などはなかなか踏み切りが渡れず2~3分ほど遠回りでもガードの下を通って駐車場に向かいますが、その夜はとても寒く早く帰って寝たいのとその時間はとっくに終電を過ぎているので早く帰宅出来る土手沿いの踏み切りを渡ろうとしました。コート、マフラー、手袋、マスクをしても真冬の風は冷たく凍えそうでした。

そんな時間帯でしたから当然土手の上の道は誰もいません。ただ遮断機が開いた踏み切りをボーっと照明が照らしているだけです。私がちょうど踏み切りに差し掛かった時何気なくホームを見ると、一番踏切寄りのベンチに一人の女の子(20歳前後だと思います。)が座って下を向いていました。寒さで頭の回転も鈍っていたのでしょうか。始発まで5時間はあるのになんでこんな所にいるのだろうと思いました。

次の瞬間「これはマズイ」と思いました。ホームは真っ暗なのにその子の姿だけボーっと浮かび上がっています。それにその子の服が白い半袖に赤のチェックのミニスカートでした。真冬にこの姿では1時間で凍死です。

気が付いたら走っていました。足はもつれ、後ろ髪を引かれるというのでしょうか。走っても走っても思うように前に進まない感じでした。ダッシュで帰宅し、結局疲れていたのですが寝られませんでした。

外にいるのではないかと窓のカーテンのそばにも行けません。

生まれて初めて恐怖というものが分かった様な気がします。その後何回もあれは幻覚が妄想だったのか考えてみましたが、疲れていたとはいえ眠気よりあの寒さでは幻覚は見ないだろうし、服の柄まではっきり見えたのできっとその場所に存在していたという結論です。

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