予期せぬ訪問者

これは、私の父親の話です。私の父親は、十年ほど前に大腸がんを患いました。幸い発見が早く場所も良かったので、大腸を少し切り取るだけで済むことになりました。ただ大きい手術であることに変わりはなく、本人は死ぬかもしれないと不安に思ったそうです。そうして手術も無事終わり、術後入院の数日目、寝ていた父は誰かの気配を感じました。


気配の主は心配そうにしばらく父を見下ろして、もう一人いた看護婦さんらしき人と、枕元の方向に行ってしまったそうです。「ああ、母ちゃんかな~(私の母親の事)」と思っただけで、怖いなどとは思わなかったそうです。その時何気なく時計を見たら午前2時。「こんな夜中に何しにきたんや?」と不思議に思いましたが、そのまま寝てしまったそうです。

翌日母に聞いたところ、もちろんそんな時間に面会には行っていない、行くくわけがないと言われました。じゃああれは何だったのだろうと不思議に思い、昨晩の様子を思い返してみました。よくよく思い出すと、看護婦さんの服装が変だった事に気が付いたのです。今時のナースキャップではなく、大きなぶかぶかの昔の看護婦さんがかぶっていたようなものを被っていたそうです。それに、2人が消えていった方向は壁になっていて、進んで行けるわけがないのです。父はある人物に思い当たりました。

父の母親…つまり、私の祖母は父が中学生の時に、まさに今父が入院していたこの病院で亡くなったそうです。父の記憶では、亡くなったときの病棟も同じ場所だったそうです。「母さんが心配して、見に来てくれたのかなー…」そう呟いた父は、少し嬉しそうな顔してました。

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