おれの地元は埼玉寄りの東京都内なんだが、近所に『憩いの森』という、ガキの遊び場になっている場所があった。そこは、殺人事件があっただの、日本軍の幽霊が出るだの、管理人のババアに殺されるだの、気味の悪い噂ばかり聞く場所だった。
小学生のある夏の夜、友人3人とそこへ肝試しへ行った。夜の『憩いの森』は想像以上に暗く、肩掛けカバンに入れた懐中電灯すらどこにあるのか、あっという間にわからなくなってしまった。外のわずかな光を頼りに、何とか暗闇を脱出できて、ほっとしたのもつかの間。帰り道に4人で話した内容が、なんだか奇妙で不可解で俺をぞぞっとさせた。4人とも暗闇の中で、ある一つの映像が浮かんでいたようだ。
・『憩いの森』付近を流れる用水路沿いの道路
・飛び散ったバイクの破片
・うずくまる一人の男の子
それは、2年前に盗難車で事故って亡くなった、K藤君という地元で有名な不良の先輩だった。 先輩といっても同じ小学校ってだけで、4人ともとくに親しかったわけではない。なんで『憩いの森』で俺らにそんな映像が浮かんだのか、結局今でもわけわからん。
とりあえず、一週間後くらいに4人で事故現場には行って、手を合わせた。そのあとは、特に何も起こってない。4人の間でも、特に話題にはならんかった。ちなみに『憩いの森』はまだ健在です。心なしか、前よりちょっと樹木が増えてる気がする。