妬みで力を発揮する憑き物を操る一族

これは俺が育った田舎町の話。まわりは山に囲まれてる普通の田舎の町。 田舎ゆえなのか閉鎖的な町で、就職も進学も家から通うのが普通だったんだけど、俺はそれが嫌で、高校卒業して関東の学校に進学決めて田舎を離れた。

その田舎での話なんだけど、そこで生活していた俺はさほど怖くはないが、他とは違う特色というか独特な一族がいたので話します。 『牛蒡種(ごぼうだね)』って聞いた事ありますか?ネットでググると出てきます。自分が小さい頃は『憑き物』をあやつる一族って聞いてたんだけど、ググると『邪視』の部類らしい。っていっても、近代その力はだいぶ弱まってると思うけど。

まず『牛蒡種』の話をすると、その一族の祖先がその力を得て、子孫は何もしなくてもその力を継承というか受け継いでしまうらしい。ただ、血がうすまるにつれその力も弱くなってるみたいで、自分が小さい頃近所のおばあさんの後は、変な話は聞かなくなった。その力というのは、妬み・嫉みの感情を持って相手を見ると、見られた方は高熱を出したり身体が痛くなったりと、体調に異変が出る。
ただ、死なせるほどの事はないのと、相手がその力を持つ者以上の立場だと効かないらしい。

俺が保育園の頃おふくろが高熱で寝込み、病院の薬も全然効かなかったので、親父が行者を呼んで見てもらったら、「くらっとる(憑かれてる)」って言われて、親父がおふくろに心当たりはないかと聞くと、「そういえば最近、○○のおばあさんに『庭の花が綺麗ね』って言われた」という。○○のおばあさんは近所に住む、牛蒡種の一族から嫁に来ていた人。とりあえず行者さんにお祓いを受けさせてる間に、親父がそのおばあさん家に怒鳴りこんでった。で、そのおばあさんに「いいかげんにしろ!」みたいに言ったらしい。おばあさんは意識的にやってるわけじゃないけど、自分の力は解ってるからか「っへ」って少しおどけて笑ったらしく、帰ってきても親父はブツブツ怒ってた。おふくろは、うってかわって熱は下がり起き上れるようになった。

うちもちょっと特殊な一族で、先祖に行者がいた家系なんで貰わないはずだったんだけど、おふくろは嫁に来た身だからか、くらっちゃたみたい。元気になったおふくろに親父が、「弱みを見せたり弱いと思われるとまたやられるから、強い気持ちでいろ」って言われたみたいだけど、怖くてしばらくは外には出なくなった。

年寄りがいる家は、『牛蒡種』の話、誰が一族かって事は家族に聞かせるから知ってる人もいたけど、町開発で、後から入ってきた人たちは知らない。土地柄か、呪い・祟りの話は普通に食卓で話題にあがってて、「どこどこの誰々さんがくらっとる」とか、「あの家でまたやっとる(別の憑き物の話)」とかよく聞いてた。子供なりに、厄除け魔除けの方法や、心の持ち方やなんか教えられてたから、俺は怖いというイメージはないけど、ある意味痛いなーと思ってる。 正直、呪ったり、念込めたりって簡単に出来るけど、その反動を考えるとやってはいけないって理解してる。

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