幽体離脱した時に見たもの

幽体離脱の話しはよくある。それから金縛りとか。金縛りの場合は人間の「脳」に関係があるなどと言われているが、本当のところどうなのか・・・。わたしは幽体離脱も金縛りも数回経験した。金縛りは不快だった。眠りたいのに目が覚め、しかも身体の自由がきかない。明日の仕事にさしつかえると思うと更にイライラしてくる。


が、幽体離脱の方は心地良かった。通常ではあり得ないような自由な感覚。重い体を動かさずにどこへでも行けるような気がする。フワフワと宙を漂い、気がつけば眼下に自分自身が眠っている。問題は幽体離脱している時の自分の行動をどうやってコントロールするかだ。幽体離脱した時の自分の動きを自由に操ることが可能なら、きっと人生楽しいに違い無い。

話が逸れたが、ようは幽体離脱した自分をわたしはコントロールできない。この経験をしたのは過去3回。どれも寝室や自宅付近を無意味にフワフワしただけで体に戻った。かなり権威ある博士が(昔の人だが)幽体離脱まがいの現象を意図的に行う方法を自らの本で紹介していた。現在実験中。それはまた後日紹介しよう。ところで今日は何を書こうか。そうそう、過去3回の幽体離脱のうち、一度だけとても無気味で嫌な体験をした。それを紹介しよう。

かれこれ15年以上前、ある友人の家に泊まりに行ったことがある。夜遅くまでバカ話しで盛り上がり、眠りについたのは午前1時を過ぎていた。いつもオヤスミ3秒でイビキをかくわたしは、その日もすぐに熟眠していたと思う。ところが不意に目が覚めた。とても寒かったのだ。目を開けてびっくりしたのは、すぐ鼻先に電気の傘がぶらさがっていたことだ。ぶつかるっ!!・・・そう思った時にはすでに天井が迫って見えた。電気の傘をすり抜けたのだ。久しぶりに幽体離脱か?(この時、離脱経験は2回目だった)悠長なことを考えているうちに体はどんどん浮いて行き、天井をすり抜け、真っ暗い天井裏を抜けて屋根へ出た。

ちなみに、電気の傘や天井やら屋根やらを抜ける時どんな感覚かと言うと、全身がざらざらした感じがする。体験者によって感覚は違うのだろうが、細胞というか毛穴というか、そういった場所がざらざらするのだ。屋根に出ても相変わらず自分自身の動きをコントロールできない。これからどこを漂うのかと思ったが、その日は屋根の上でずっとフワフワしたままだった。

屋根の上からは友人宅の庭が見えた。向い側には所々電気のついた3階建ての建物がある。これは産婦人科病院だった。電気のついた病院の窓からはカーテン越しに動く人影が見える。おそらく数人の人が室内や廊下らしい場所を忙しく動き回っていた。夜遅くまで病院も大変だな・・・そんなことを思った時、急に背中が重くなった。何かがわたしの背中にはりついているみたいだった。左肩の辺に人間の手のようなものを感じた。だがそれはとても小さい。何だかとても嫌な感じがしてきた。得体の知れない胸騒ぎのような感覚。同時に、背中にはりついていた何かがわたしの真横に顔を出した。

それは血まみれの赤ん坊だった。まだ手足もしっかりしていない、産まれたての新生児。目もひらかない新生児の顔には額から鼻・アゴにかけて剃刀で斬られたような傷があり、血が出ていた。見るに耐えられず目をつぶると、ガクンッと強く引っ張られる感じがして目が覚めた。わたしは布団の中に戻っていた。後日、その病院の若い医者が帝王切開に失敗したという噂を耳にした。切開で母親の腹部にメスを入れた時、過って子宮内の胎児の顔まで斬ってしまったのだ。かなりの慰謝料を払って示談で済ませたそうだが、人の口に戸はたてられない。

顔を斬られた胎児は女の子だったらしい。命に別状はなかったというから無事に産まれたのだろう。わたしがあの時会ったのは、その女の赤ん坊かもしれない。とにかく、嫌な経験だったことには違い無い。

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