水子地蔵の礼参り

ある友人が赤ちゃんを産んだ。これは、その友人が体験した不思議で怖いお話。


友人sの赤ちゃんはとても元気な子で、風邪ひとつひいたことがなかった。ところが、5カ月を過ぎた頃から夜泣きが酷く、母親であるsは毎日睡眠不足に悩まされるようになった。育児休暇のとりにくい職場だったので、sは出産後2カ月から職場復帰していた。子どもの夜泣きが始まって2〜3カ月は何とか頑張っていられたが、4カ月目にもなると体調を崩し、職場でもミスが目立つようになった。大好きな仕事だし、経済的にも退職するわけにはいかない。かといって、そう頻繁に休暇もとれない。

sがあんまり青白い顔をして出勤してくるので、面倒見のいい上司の一人が、心配してワケを訊ねた。子どもの夜泣きで睡眠不足が続いている と話すと、上司は労いの言葉をかけてくれたという。そんなやり取りをした3日後、子どもの夜泣きはピタリと止んだ。久しぶりに熟睡し、このまま夜泣きがおさまってくれればいいな、と考えていると、次の日も次の日も、子どもは朝までスヤスヤ眠ってくれたのだ。やっと夜泣きから解放された!! 熟睡できるようになったおかげで、職場でのミスもなくなり、顔色も良くなったある日、sを心配してくれた例の上司が、ニコニコしながら話しかけてきた。上司はsに、子どもさんの夜泣きが治って良かったなと言い、それからこんなことを告げたのだ。

上司は、近所のG寺に祭られている水子地蔵に、「夜泣き封じ」の願をかけたのだそうだ。それはこの地方に古くから伝わるまじないで、家族以外の第三者が三日間、誰にも内緒で午前零時過ぎに水子地蔵の前にお菓子などを供え「夜泣き封じ」の願をかけるというもの。上司のお子さんが赤ちゃんの頃、やっぱり夜泣きが酷く、近所のおばあさんが「夜泣き封じ」の願をかけてくれたおかげでピタリと治った という経験があり、もし治れば儲けモノ程度の気持ちで、願掛けをしたのだという。そんなことで夜泣きが治ったとは思えなかったが、自分の為に三日間も夜中に願掛けをしてくれたことには素直に感謝した。

ところが、上司は続けてこんなことを言った。「夜泣き封じ」の願が叶ったら、それを告げられた母親は7日以内に、願を掛けた同じ時間の午前零時過ぎ、一人でお供物を持って水子地蔵へお礼参りにいかなければならない、と。上司は、7日以内に必ずお礼参りするようにと告げ、立ち去った。

sはどうしようかと思い悩んだ。G寺の水子地蔵は家からそう遠くないが、夜中にそんな場所へ一人で行くなんて怖くてできない。それに、上司の願掛けのおかげで夜泣きが治ったとも思えなかった。旦那さんに相談すると、案の定、行く必要はないと言われた。1日、2日、3日と、sはお礼参りに行かなかった。4日目の日に、職場で例の上司から お礼参りは済んだか、と訊かれたので、もう行ってきました、とウソをついた。

それから一週間ほど過ぎ、「夜泣き封じ」のことなんか忘れた頃、あの上司が会社を休んだ。次の日も次の日も職場に顔を出さないので、どうしたんだろうと思っていると、同僚の一人がお見舞いのお金を徴集して回ってる。

理由を尋ねると、例の上司が入院し、職場復帰するには時間がかかりそうなので、代表の何人かでお見舞いに行くという。sはなんだか嫌な感じがした。上司は執拗に「お礼参り」に行くよう言っていた。自分がウソをついたことで、上司に祟りでもあったのではないかと思ったのだ。次の日、お見舞いに行った同僚から上司の様子を聞いた。上司は全身に「おでき」のような水膨れができ、原因がわからず入院したとのこと。顔や首や手の甲にも「おでき」ができ、かなり憔悴しきった様子だったそうだ。

これはマズイと感じたsは、気の進まない旦那さんに訳を話し、零時過ぎに水子地蔵に参拝して必死で謝った。それが利いたのか、上司は元気になり、職場に復帰したそうだ。

『水子地蔵の礼参り』へのコメント

  1. 名前:7c : 投稿日:2016/09/05(月) 00:47:31 ID:
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    EzNTU2MTk

    感謝の報告と願ほどきのお参りは、自分の心の区切りのためにもしたほうがいいってバッチャが

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