そこは由緒ある大きな神社で、毎日色んな参拝客が訪れる。観光目的でやってくる人もあれば、お祓いや御祈祷をする人もいて・・・フツーではちょっと考えられない悩みを抱える人たちも相談にやってきた。これは、そこで体験した怖いお話のひとつ。
神社の本殿の勝手口で片付けをしていた時のこと。御祈祷する神主さんたちが身支度を整える部屋に、祝詞や尺を保管しておく机があり、その下に変なふろしき包みを発見した。埃だらけであんまり汚いので、引っぱり出してみると、かなり重い。不思議に思ってふろしきを解いてみると、それはマムシの焼酎漬けのビン。そこに古参の巫女さんがやってきて、顔色を変えた。
触っちゃダメです!! 蛇に祟られますよ!
意味がわからずボケづらしているわたしに、彼女はその焼酎漬けの由来を教えてくれた。彼女が神社に勤め始めて間もない頃、一人のおじさんが御祓いにやってきた。悩みは「蛇の祟り」。手には「マムシの焼酎漬け」を抱えていた。
おじさんは蛇捕りが趣味で、特別「マムシ」を捕るのが好きだった。捕まえた「マムシ」は皮を剥いで丸焼きにしたり、焼酎漬けにしたりして、病気や怪我をした際の薬代りにしていたのだ。半年位前、大きな「マムシ」を一匹捕まえたので、焼酎漬けにしようとビンに入れた。「マムシ」の焼酎漬けを作る時、普通は2週間〜3週間くらいビンに閉じ込めたまま、水だけを少し入れて、排泄物などを出させるのだそうだ。やがて蛇が弱って死ぬと、そこでやっと焼酎漬けにする。
ところが、その時に限っておじさんは、捕まえたばかりの蛇を生きたまま焼酎漬けにしてしまった。それから、不幸なことばかりが続いた。まず奥さんが事故で亡くなり、元気だったお子さんが病気で入院。仕事はうまくゆかず、自分自身も腰を痛めて半身不髄状態に陥った。
さらに恐ろしいのは、毎晩「何か」に首をしめられたように苦しいのだそうだ。あまりに嫌なことばかりが続くので、おじさんは評判の「拝み屋」に相談した。すると「拝み屋」のおばあさんが、あんたの首には大きな蛇が巻きついている。どこかで祓ってもらった方がいいと告げたのだ。
今まで沢山の蛇を捕まえてきたものの、こんな経験は初めて。思い当たったのは、生きたまま焼酎漬けにしてしまった「マムシ」だった。お祓いをしてもらった後、そのおじさんは「マムシの焼酎漬け」を神社に置いていった。家に持ち帰るのは怖いから、ここで処分してくれ、という。捨てるに捨てられず、それ以来「マムシの焼酎漬け」は神社にあるのだろう。
ちなみに、幾度かその焼酎漬けを処分しようとしたらしいが、関わった人たちが不慮の事故や、病気、怪我にみまわれ、今では誰も触わらないのだそうだ。
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生殺しのようにジワジワと苦しめ、結局飲んでやらずにいれば蛇も怒ります
蛇のタタリを避ける殺しかたは「苦しませずに即死」「肉を食べたり皮を利用することで死を無為にしない」
蛇を哀れに思うより感謝しましょう