ある山中に「幽霊が出る」という噂が流れ始め、オカルト同好会のメンバーは真相を掴むと言って現場に向かうことにしました。
単にオカルトチックな出来事に興味があったというだけでなく、噂が広がるばかりで「写真」などの証拠が一切残っていないことに理由がありました。その山に向かい、幽霊に遭遇したという人物は多かったのですが、写真や映像などの媒体での証拠の確保に至った人はいなかったのです。
そのため、証拠撮影に成功することができれば自分たちの知名度を飛躍的に上げることができるだろうと考えたのでした。また、近くの町には、オカルト同好会のメンバーの祖父母が経営している民宿があったので、都合が良いという理由もありました。目的の山まで近い町の民宿で前泊した同好会メンバーは、とうとう噂になっている山までやって来ました。
厳密にどこで幽霊と遭遇した、という情報は得ていなかったので、明るいうちから山に入り、それらしいポイントを探すことにしました。しかし、手分けして捜索してもそれらしいポイントは見つけられませんでした。日が暮れるまで捜索しても何の成果も得られなかったメンバーは、とりあえず集合してから周囲の写真を撮影することにしました。ところが、撮影が上手くいきません。
撮影担当のメンバーはデジカメを構えますが、電源が入らないのです。厳密に言えば、電源が入った後すぐに切れてしまったのです。電池が切れたかと思い、今度は携帯電話のカメラ機能での写真撮影を試みます。しかし、これも突然に動かなくなってしまいました。おかしい、電源は十分に充電してきたはずなのに。
そう思いながらもメンバーに話を切り出すと、彼らもデジカメや携帯電話が突如として使えなくなったことを話します。不気味になったメンバーですが、最後に何としても写真の1枚は撮っておかないと、と考え、あまり使わなくなった古いカメラを取り出しました。もう、構えている暇も惜しんでシャッターを切りました。何とか撮影には成功し、その後は同様に動かなくなりました。
後日、そのカメラのフィルムを現像してみると、メンバーは驚愕します。人のような、獣のような、何だか分からない影がこちらに向かって手を伸ばしている写真だったのです。まるで、自分を撮影しようとしているカメラを壊そうとしているかのような、恨みの表情を浮かべながら。
その写真は、破り捨てて捨てました。お祓いをした方が良かったかな、と話す同好会メンバーですが、その後は何とか祟りなどの被害は受けていないそうです。ただ、最後に撮影したカメラには、手形のようなものが付いていて、拭き取ることができなかったそうですが。