これは大学時代の友人の話です。
友人は遠方から下宿して大学に通っている人物で、彼と昼食を食べている時に故郷の話をしてもらうことになりました。この話は、そんな中で特に興味深い内容だったのでよく覚えています。
その友人が住んでいた町には、ある神社がありました。そこには、2体の狛犬がいました。何の変哲もない普通の狛犬でしたが、その町では、ある「噂」が流れていました。悪さをした人は、その狛犬に食べられてしまう、というものでした。
友人も、最初は子供だましな、と思ったそうですが、どうにも大人たちの間でも流行っている話のようで、学校の教師までもが噂していました。ある人が空き巣に入ったあと、2体の野犬に襲われたときのことだそうです。
その人物が後に捕まったとき話した内容なのですが、襲ってきた2体のうち1体には反撃し、顔を鈍器で殴りつけたそうです。ちょうどその頃、狛犬の1体の顔にヒビが入っているのを見つけた住民がいました。その後続々と野犬に襲われた人が出ましたが、彼らに共通しているのが、何かしら悪さをした後だということ、そして、常に襲って来る時は2体一緒だということです。
その話から、町では狛犬が悪人を襲いに来る、という噂が流れたのでした。実は、友人もその犬を目撃したことがあったそうです。悪さをして犬に襲われたのではなく、通り魔に襲われてしまったときのことなんだそうです。
その日は塾の帰りが遅くなってしまい、すっかり日が沈んでしまっていました。薄暗い中、包丁を持った人物に襲いかかられたのだそうです。彼は大声を出そうとしましたが、声を上げたのは通り魔の方でした。
電灯の明かりだけでよく見えなかったそうですが、どうにも複数の犬に通り魔が襲われているように見えたそうです。通り魔はたまらず退散したそうです。襲いかかったのは2体の犬で、そのうちの1体は、顔に傷を負っているように見えたそうです。そのため、彼も噂を信じるようになったということでした。
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やっぱり狛犬はすごい。俺はそう思った。