【怖い話】近畿地方の貸し別荘に出る人の塊の様な恐ろしい妖怪

2007年の話。この話は一応口止めされている内容のため、具体的な場所などは書けません。具体的な部分は殆ど省くかボカしているので、それでもいいという方だけお読みください。

高校3年の夏休みの事。俺と友人5人は、受験勉強でかなり疲れが溜まっていた事や、高校最後の夏休みということもあって、どこかへ旅行に行こうと計画を立てた。ただし、もう夏休みに突入していたため、観光地はどこもキャンセル待ちの様な状態で、宿泊地を探すのにかなり苦労した。そしてやっとの事で、近畿地方の高原?のような観光地のペンションにまだ空きがあるという情報をネットでみつけ、まあ騒いでも苦情が無いならどこでもいいか、と即決でそこに決めた。

旅行当日、早朝に出発し昼前に現地に到着したのだが、そこで少し問題が起きてしまった。どうやら、旅行代理店とペンションの管理組合?との間で伝達ミスがあったらしく、俺達は今日から2泊3日で予約していたにも関わらず、ペンションの方には宿泊予定が今日から3日後と伝わっていて、今は満室で1つも空いていないと言い出した。俺達はここまで来てそれはないだろうと文句をいうと、最初はふもとの町にあるホテルなどを紹介されたが、俺達はただ観光に来たわけでは無く、夜中に騒いでも苦情が来ないような場所が条件だったため、かなり食い下がった。

するとペンションの人が、「じゃあちょっと待っていて欲しい」と携帯でどこかへ電話をし始めた。電話の内容は良く分からなかったが、なんとなくかなりモメていたようで、そのまま15分ほど電話していたが、どうやら話がまとまったようで、「近場に貸し別荘があるので、そこでどうだろうか?料金はこちらの不手際なのでペンションの代金の3割引で良い」と言って来た。

俺たちはまあそれならと納得したが、そこから少し雲行きが怪しくなった。どうもその貸し別荘は長い事使われていなかったらしく、準備や掃除に少し時間がかかるらしい。その間俺達には交通費と水族館の割引券を渡すので、そこで時間を潰して夕方にまた来て欲しいとの事だった。その水族館はペンションのある場所からかなり離れていた、というか県外の某大都市にある水族館で、俺達が見終わってもどってくる頃には、午後6時近くになっていた。俺達は、
「こんなに準備に時間かかるってどれだけ放置されていたんだよ」
「廃墟とかじゃねーよな?」
「なんか怪しいんだけど」などと不安を口にしながら管理事務所に向かった。



ペンションに戻ってくると、先ほどとは違うおじさんが待っており、準備が出来たので案内すると、歩いて15分ほど離れた森の中にある別荘へ案内された。そこは本当に完全に森の中で周囲には何も無く、余程大声で騒いでもまず苦情が来ないような場所だった。そのおじさんが言うには、暫らく使われていなかったので手間取ったが、電気も水道もガスもちゃんと通っているし、携帯は通じないが管理小屋への直通の電話もある。何の問題も無い。と、しきりに説明をし始めた。俺達は、なにかおじさんに必死さが感じられてかなり不安になってきたが、今更どうしようもないので別荘の中に入った。別荘は外観もそうだったが、洋風のかなり古いつくりで、築30年か40年くらい経っていそうな建物で、インテリアもそれに見合ってかなり古臭い。ただし、使われていなかったというわりに、かなり小奇麗だった。今から思うと、小奇麗と言うより、『人が使った痕跡が殆ど無い』といった方が良い感じだったが。

一通り別荘内の説明を聞き、建物も2階建てで広いしまんざらでもないなと荷物を降ろし、夕飯のバーベキューの準備をしようとしていると、おじさんが去り際におかしな事を言い出した。ここは夜中に熊が出る可能性があるので、深夜の外出は控えて欲しいと言う。俺達はなぜかかなり念入りに、深夜の外出をしない事を約束させられた。ペンションの密集地から15分しか離れていないこんな場所に??と皆疑問に思ったが、まあ恐らく、ガキが夜中に出歩いて問題をおこしたり事故に合うと面倒なので、怖がらせるような事を言って脅かしているのだろうと納得した。

一日目はそんな感じで過ぎ、晩飯を食った後で夜中の森の中を適当に散策し、花火をしたりゲームをしたりと遊んで、深夜2時頃に寝た。その日は特におかしな事は無かったのだが、次の日友達の1人が変な事を言っていた。そいつは夜中に小便がしたくなり、トイレに行くと、外から太鼓の音が聞こえてきたらしい。俺達は何かの聞き間違いだろうと言ってそのまま流し、本人も気のせいだろうと納得したが、その日の夜に事件が起きた。

その日、晩飯の焼肉を食い腹もいっぱいになったし暇になり、する事が無かった俺達は、昼間見つけた林道へ肝試しに行く事にした。肝試し中は何事も無く、俺達はつまんねーなと別荘に戻ると、入り口に20代後半くらい?の男が立っていて、ドアノブを握っている。時間は夜10時頃。こんな時間に管理人の人が来るとも思えず、「空き巣か?」と俺達が近付いていったのだが、その男はドアノブを握ったまま、こちらを振り向こうともしない。足音も声も聞こえるのだから、泥棒や不審者の類なら逃げそうな物だが、そいつは10mくらいまで近付いても微動だにしない。何か気持ち悪かったが、メンバーでリーダー格の友達と俺が、「おっさん何してんだよ」と言いながら近付いていき、男の目の前まで来たのだが、それでも動く気配が無い。埒があかないので、友達が「聞こえてないのかよ!」とそいつの腕を引っ張った。その瞬間、俺と友達は「うわあああああああああ」と大声を上げて後ろへ飛びのいた。

何故飛びのいたかというと、そいつの腕を友達がつかんで引っ張った時、その腕の手首から10cmくらいの場所が、まるでゴムのようにグニャッと関節ではないところから曲がったためだった。何事かと他の友達が近付いてきたのだが、その時になって男はこちらへ振り向いた。見た目は普通なのだが、目はどこを見ているのか良く分からない風で、焦点が定まっておらず、口をだらんと開けて涎をたらし、その時になって気付いたのだが、服装もかなりボロボロでどう見ても普通の人には見えない。俺達が呆然と男を見ていると、男は俺達がまるで見えていないかのように、そのままフラフラと森の中へ去って行ってしまった。

俺達はあまりの出来事に動揺し、暫らくその場から動けなかった。しかし、そのままそこにいるわけにもいかず、俺達はふと我に帰り、大急ぎで別荘内に入りドアの鍵を閉めると、全員で室内の全てのドアの鍵をチェックし、それが終るとリビングに集まった。そして皆、
「なんだよあれ…」
「幽霊か?」
「でも触れたぞ」
「あの腕の曲がり方ありえないだろ…」
などとパニックになって興奮気味に話していると、今度は外から…ドン …ドン …ドンと、微かに太鼓の音?が聞こえて来た。その音は、ゆっくりとだがこちらへ近付いてきているようで、俺達はみな押し黙り聞き耳を立てて、音のするほうに集中していた。音が庭辺りにまで近付いた頃、不安が最高潮に達した俺は我慢できなくなり、リビングのカーテンを開けて外を見た。

すると…暗がりで良く見えないが、何か大きな球状のものが、転がりながらこちらへ近付いてくるのが見えた。太鼓のような音は、その球状の物体からしているらしく、…ドンと音がすると転がり、また…ドンと音がすると止まる。それを繰り返しながら、大通りから別荘へ向かう道をゆっくりとこちらへ向かってきている。大きさは5~6mくらいあったと思う。他の友達も窓を見たまま動かない俺が気になったらしく、全員窓の側へやってきて、『それ』を見ていた。暫らく皆黙ってその様子を見ていたのだが、暗がりで良く分からないので正体がつかめず、誰も一言も話さずずっと『それ』を凝視していた。

するとかなり近付いた頃、『それ』は玄関近くまでやってきたため、玄関についている防犯用のライトが点灯した。その瞬間、俺は「なんだよあれ!洒落になんねーよ!」と、慌ててカーテンを閉めた。カーテンを閉める前、一瞬ライトに照らされた『それ』は、なんと表現したら良いのか…『無数の人の塊』とでも言うような物体だった。老若男女様々な人が、さっきの男と同じように口を開け涎をたらし、どこも見ていないような、焦点の合っていない目の状態で、関節などとは関係なく体と体が絡みつき、何十人もの人が一つの『塊』となって転がっていたのだった。

俺以外も全員その『人の塊』を見たため、あまりの恐怖に何も言えず、俺達はリビングの端の方に一塊になり、ガタガタと震えながら、「どうなってんだよ…」「なんだよこれ…」などと不安を口にしていた。暫らくすると、太鼓の音のようなドンという音が聞こえなくなった。『それ』がいなくなったのかどうか分からない俺達は、そのままリビングの端でじっとしていると、今度は玄関の方から、ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!と、激しくドアを叩く音が聞こえてきた。

俺は恐怖と不安でパニック状態で、耳を塞ぎ、他のやつも皆耳を塞ぎ、必死で今の事態に耐えていたのだが、暫らくすると今度は建物中のあちこちから、ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!と、窓言わず壁と言わず、あちこちを大勢の人が滅茶苦茶に叩く音が聞こえてきた。耐えられなくなった友達が、「電話しよう、管理事務所直通の電話あっただろ、あれで助けを呼ぼう」と言った。俺達はハッとその事に気付き、急いで玄関側にある電話に急いだ。

俺が電話を取り、『直通』と書かれたボタンを押すと、2、3コールの後、別荘まで案内してくれたおじさんが電話に出た。おじさんに必死で事情を話すと、おじさんが独り言のように『…まさか、まだ出るなんて…』と呟いた後、『説明は後回しで、リビングに神棚があるね?そこにお札とセロテープが入っているから、そのお札をドアに貼って待っていなさい』と言った。俺達は意味が解らなかったが、他に解決策も無く、とにかくリビングへ戻り神棚を探す事にした。

神棚は、部屋の端の方の天井近くにあった。椅子を使って中を覗き込むと、たしかにお札とセロテープが入っている。俺達は急いでそれを出すと、玄関とリビングの入り口のドアと窓にお札を貼った。窓にお札を貼る時、なるべく外を見ないようにしていたのが、一瞬だけ外を見てしまった。すると、青白い腕が数本、窓をガンガン叩くのが見え、更に腕の向こうに、どう考えても腕の位置とは不自然な形で人の顔が見えた。その顔はやはり他と同じように、焦点が合っていない目でだらんと口をあけていた。俺は外で『それ』がどんな状態になっているのか、恐ろしくて考える事も出来なかった。何時間くらい経ってからだろうか、外が明るくなり始めた頃、壁やドアや窓を叩く音は聞こえなくなった。

それでもまだ『それ』がいつかもしれないとおもうと動けず、そのままじっとしていると、遠くから車がこっちへ向かってくる音がし始めた。車が庭に止まると、数人の足音が聞こえてきて、ドアのチャイムを押す音と、「おーい、大丈夫か?」と声が聞こえてきた。俺達は「助かった…」と大急ぎで外に出ると、最初にここの手配をした人と案内した人、それと他に3人のおじさんが来ていた。手配をした人と案内をしてくれた人がすまなそうに、「本当にすまない、もう大丈夫だとおもっていた。事情を説明するから、とにかく荷物をまとめてきてくれ。ゴミとかはそのままでいいから」と言い、俺達はその通りにして別荘を出た。

車に乗せられ、俺達は神社へ案内された。一緒に来ていた3人の人は、その神社の関係者らしい。俺達はホッとして緊張感が解けたのと、助かったと言う気持ちもあったが、それ以上に怒りが湧いてきて、「何であんな場所へ泊めたんだよ!」と怒った。すると、神社の神主さんらしき人が、こんな話をし始めた。

あそこは昭和40年代までただの森だったのだが、観光地開発をするということで、40年代の終わり頃に人の手が入った。それで順調に開発が進んでいたのだが、あの別荘を建てた昭和50年代前半頃から、おかしな事が起こり始めたとか。別荘が原因なのか、開発そのものが原因なのかは今でも分からないらしいが、とにかく、あの太鼓の音や人の塊がその頃から出没し始め、最初の別荘の持ち主とその次の持ち主は、あそこに宿泊中に失踪してしまったらしい。

それで売りに出され、今の管理組合が所有する貸し別荘となったのだが、それからも何度もあの人の塊は現れ、被害者は出なかったが、目撃者から散々苦情を言われたので、神主さんが10年ほど前に御払いをしたとか。それ以後、貸し出されてはいなかったが、掃除や整備に来た人たちは誰も『それ』を見かけていなかったため、もう大丈夫だろうということで、俺達に貸したらしい。その結果が昨晩の事件らしい。

俺達は完全に巻き込まれた被害者なので、散々文句を言うと、管理人の人が、ここまでの交通費と食費はこちらが持つ事、別荘のレンタル費用もいらないし、次に旅行をする時は大幅に割引するように代理店に口利きもする。「だから本当に申し訳ないけど、この事は黙っていて欲しい」と頭を下げてお願いしてきた。俺達は何か言いくるめられた気もするが、警察にこんな話をしてもどうせ信じてもらえないだろうからと、渋々その話を飲むことにした。

以上です。上に書いたように、そういう事情なので詳しい地名などは書けません。ちなみに、去年割引してくれるというので、旅行代理店に電話した時に聞いたのだが、あの別荘は取り壊され、今は無い更地になっているらしい。

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