今から20年くらい前の出来事。一人っ子だった俺は、幼稚園から帰ってくるとファミコンをするか家の目の前の公園で一人で遊ぶのが日課だった。最初はどんな出会いだったかは憶えていないのだが、公園で遊ぶ時にはいつからか俺の遊び相手になってくれるお兄さんがいた。お兄さんと言っても当時の俺からしたら「おっさん」であったが。実際の年齢は27〜28歳くらいだったと思う。外見は少し変わっていて、女の子みたいなロン毛で服装もあまり見かけない感じ。顔もなんだか不思議な感じがした。
お兄さんはいつでも優しくて、ボール遊びをして遊んだり、ゲームの裏技とかも色々教えてくれた。あと「お母さんを大事にするんだよ」とか「赤ちゃんが生まれたら、しっかり守ってあげるんだよ」とか、そんなような事をよく言われたのを覚えている。小学校へとあがり、遊ぶ友達も沢山できた頃にはお兄さんの姿を見かける事はなくなった。
小学5年の夏休み。その日は友達と遊ぶ約束があったのだが、当時3才の妹の世話があったので出かけたくても出かけられない状況だった。困ったなあと思っていると、妹はそのまま昼寝を始めたので、早めに帰ってくればいいか、と俺はそのまま出かける事にした。家を出て正面の公園に目をやると、昔よく遊んでくれたお兄さんがこっちを見て手を振っていた。特徴のある外見のお兄さんだったし、昔と全然変わっていなかったからすぐに分かった。
「久しぶりだね!」とか「どこに行ってたの?」とか、他愛のない会話をした後、お兄さんは「赤ちゃんが生まれたら守ってあげるんだよってお兄さん言ったよね? 今日は遊ぶの我慢して、お母さんが家にいる日に遊ぼうな」と少し強い口調で言った。俺はまだ子供だったし、お兄さんの言う事に不信感を抱く事もせずに素直に家に帰り、妹のおもりをする事にした。家に帰り、妹の寝ているソファーを覗くと、妹は先程までは元気だったのに凄い汗をかいていて、明らかに熱が高かった。俺はオロオロしながらも母が働くパート先へと電話をし、母に事情を説明した。母の職場は割りとすぐ近くだった。母は早退し、10分程で帰宅するとそのまま三人で病院へ。妹はあのまま放置していれば肺炎になって命も危ういところだったそうだ。
お兄さんに会ったのはそれが最後。お兄さんの事については考えても考えても解らないのだが、最近一つだけ気になっている事がある。それは、今の自分の外見があの時のお兄さんにかなり似ているという事だ。今でも忘れられない不思議な体験でした。