大学生のときに忍者の国の南端にある海でかなり沖のほうまで泳いだ。ブイなんかとうの昔に通り過ぎた。この海は足がつかないくらい深い場所でも海底が見えるほど水が澄んでいるのだが、台風の影響かいつもより海水が濁っている。水の底は一面に茶色く濁った緑色である。相当沖に来たところで疲れたからそろそろ引き返そうと思い、立ち泳ぎで体を休めていると足の下の緑に濁った海水の中を大きな長い影がすぅっと横切った。長細いうなぎか蛇のようなシルエットだったけど、頭が大きめの浮き輪ぐらいあったと思う。見えたのはほんの数秒だったけれどとにかく長いという印象を持った。しばらく固まった後、とにかく刺激しちゃいけないと思いゆっくり平泳ぎで海岸まで戻った。足が着くほどの浅瀬になると全身が今頃恐怖でがたがた震えだした。ただの見間違いだったのかもしれないがそれ以来海では絶対に泳がない。船にも乗りたくない。