【地縛霊】22歳の兄がいる40代のおじさんの話

私は、地縛霊を育ててる一家に出会った事があります。私は高校の頃、よくピザ屋さんに寄り道しました。ピザ屋さんは、交通量の多い大通りに面していて、とても賑やかなところでした。しかも大きいビルの1階にあって、周りは広い駐車場で、霊なんて凡そ無縁のイメージでした。ピザ屋さんがあるビルの1階には、もう1軒のお店が入っていました。そのお店は住宅設備屋さんでしたが、いつも閉っていて、人の出入りもありませんでした。でも明かりが点いてたり、ドアが開いていることがあって、お店をやってる様子ではありました。

当時インテリアに興味のあった私は、気紛れに住宅設備屋さんを訪れました。中にはおじさんが一人居て、「どうやって入ってきた!?」と私を誰何しました。話を聞かせていただいたところ、まず住宅設備屋さんが既に廃墟同然だったなど、色々大変なことが分かりました。
・住宅設備屋さんは、ずっと以前から操業していない。
・おじさんの兄は「22才半」だけど、おじさんはどう見ても40代。
・会社の跡地には兄が住んでる。
・おじさんが東京へ戻るとき、お店を厳重に戸締りした。
・同じく、電気のスイッチなどをよく確かめ、私にもここへ寄り付いてはいけないと厳命した。
・おじさんはかなり急いでるふうだった(電灯やテレビの方をチラ見して、何かを恐れてるふうだった)。

その日は、おじさんの兄が地縛霊だとは明かされませんでした。別の日、そのおじさんの兄が、私の通っていた高校の卒業生ということが分かりました。教えてくれたのは古語漢文の先生です。おじさんの兄は在学当時から、大人たちに将来を心配されていました。何に対してもやる気がなく、落第しない程度の勉強しかせず、そのくせ大口を叩いてはクラスで浮いていたそうです。他の学校だったら絶対イジメられていただろう、というのが先生の率直な印象です。「こんな事で、将来どうするのだろう」と、保護者を交えて相談の機会が持たれたことも一度ではありません。家がお金持ち(※1)なのを差し引いても、将来は芳しくないだろう(※2)と予想されていたそうです。でも、おじさんの兄に将来はありませんでした。

おじさんの兄は後に、A川で浮くこととなりました。それは高校卒業から5年も経っていない、春先の日のことでした。どうやら、おじさんの兄は東京の大学を出てすぐ、仕事で挫折したそうです。それを家族から責め立てられ、衝動的にA川まで走って行って、飛び込んだそうです。場所はA川の下流。そして水温の低さと、服に冷たい水が滲みたせいか、急性心不全で急死しました。ひどい話ですが、90年代の半ば頃までは、しばしばおじさんの兄は教訓として高校で語り継がれていたそうです。しかし私の在校当時は、そういう卒業生を教訓扱いにしていたこと自体がタブー視されていました。私も、この卒業生の話をするな、と注意されました。

それとは別に伝わってる話なのですが、おじさんの兄は水死後もしばしば、生前のいつにも該当しない姿で目撃されています。親族がおじさんの兄の骨壺等を東京へ移してからは、全く目撃されなくなりました。でも最近急に、おじさんの兄が年老いた姿と比較的新しい服装で目撃されました。おじさんの兄は、水死後も年を取っているのです。過ごす場所を与えられ、服なども生前には無かったものを着ているのです。このままおじさんの兄は年を重ねて、本来の天寿に達したとき、成仏するのでしょうか・・・。おじさんたち兄弟は昔、あのビルの場所に住んでいたそうです。

※1 おじさんたちの家は地元の地主で、ピザ屋さんの入ってるビルもM家の物件の一つ
※2 今の言葉でいう、ホームレスとか社会的入院が案じられていたそうです

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