田舎の友人から聞いた話です。彼のうちでは椎茸や松茸を栽培しており、山を沢山持っています。去年の秋、収穫前の松茸が盗難に遭いました。前日に山で見たときには、何もなく結構な量があったそうですが、
翌日、収穫に行くとゴッソリともって行かれ、ほとんど残っていません。「松茸泥棒だろうか?」と思った彼は、ローテーションを組んで、見回りに行くようにしました。
ある夜、ベースキャンプにしているテントで横になっていると、ザクッと土を踏む音がしました。「獣か?人か?」と、耳をすませていると、「ふむふむ、うんうん」と頷くような呟きが聞こえました。「コイツだ、泥棒に違いない。」と、思った彼は懐中電灯と棒切れを持って、テントから出ました。「おらあ!何しよんじゃい!」と怒鳴りつけながら、灯りを向けました。
懐中電灯の明かりの向こうには1メートル以上はある大きな猿がいました。その猿は手に何本か松茸を持っていたそうです。猿はまぶしそうに、手を眼前に交わしていましたが「チッ、見つかったか」と言うと、夜の山に入っていったそうです。
「絶対にあの猿は喋ったからな!はっきり聞いたんだ!」
彼はそう力説していました。