今でも結局はただの偶然だったのか、お節介だったのか、そもそも心霊現象であったのかすら分かりませんが、私が今からおおよそ10年以上前程に実際にあった怖い体験談をさせていただきます。あれは当時、私がまだ会社勤めだった時です。いつものように仕事を終えて、半年前に引っ越した自宅(一人暮らし)に戻り、食事や入浴を終えて自分の時間を過ごそうと、ベッドの中央に座り携帯電話(まだスマホはありません)をいじっていた時に起こりました。私は携帯電話の画面を見つめながらメールを打っていたのですが、自分の視界の範囲ギリギリのところに「人の手」のようなものが見えるのです。ベッド上で布団の上を這うような形で、ぼんやりとした手がそこにあるのです。
とっさに手が見えた方に視線を寄せたのですがそこには何も無く・・・特に気に留める事もなく再度携帯電話をいじっていました。しかしその10分後くらいでしょうか?また視界ギリギリの、先ほどと同じ場所に人の手が見えるのです。私はまたそちらの方に視線を寄せましたが、やはりそこには何もありません。気のせい?疲れてる?と思いつつも、私はまた携帯電話をいじっていたのですがやはりまた同じところに人の手が・・・今度は、私はそちらに視線を寄せず、視線は携帯電話のままで視界ギリギリにある人の手に意識を向けるようにしたのです。しかし特に動く気配もありません。5分程意識を向けた後、やはり気になるのでそちらを向くも当然何も無く・・・やはり疲れているのだと思い、その日は就寝しました。
それから数週間後、私は手の事など忘れていつものように夜の自分の時間を楽しんでいたのですが、携帯電話をいじっているとまた前回と同じ視界の場所に手が現れたのです。私はこの時、かなり心拍数が上がった記憶があります。一体何なの?と怒りに近いような感情も覚え、イライラしながら手のある方へ視線を寄せたのですがやはり何もありません。ここで私はハッとしました。今座っている場所や、携帯電話をいじっているという状況が前回と全く一致しているのです。そうです。前回手が現れた以降「ベッドの中央に座る」「携帯電話をいじる」というシチュエーションは一度も無かったのです。
試しに少しその場所からズレて同じ事をしても手は現れません。何か特定の理由があるのではないかと、また手が出るシチュエーションに自分の位置を戻し、携帯電話を再度いじりるようにしたのです。その後まもなく手は現れました。視線は送らず、その手を意識していましたが相変わらず微動だにしません。何故この位置で?携帯電話に関連が?どうして「手」なの?と、その手を意識しながら色々と考えていました。
その後私は、手があるところがどうしても気になって、おもむろに布団をめくりマットレスもめくったのです。私は思わず「ああああ!!!」と声が・・・その先にあったのは、引っ越してからお祝いで食べようとした冷凍食品の珍味でした。引っ越した後まもなく紛失してしまったので、何処かに落としたのかな?とそのまま記憶から抹消していたのです。幸い、密閉されているので何かが漏れるような状態ではなかったのですが、マットレスの下にあった所為か包装も破れる寸前の状態・・・中身は勿論腐敗していました。お恥ずかしながら、引っ越した以降の半年間一度もマットレスを上げた事がなく、気付く由もなかったのです。
あの手はもしかして、「もうすぐとんでもない事になるぞ」という警告だったのでしょうか?ただのお節介?と言いますか、そもそもあの手は誰の手?腐った食べ物がもうすぐひどい事になるという現実を知らせる霊なんて居るの?って言うか、携帯電話何も関係無いんじゃ・・・?色々と考えましたが結局答えなど出ず、私は無言でその腐った珍味をゴミ箱に入れる事となりました。