知り合いの話。彼が中学生の頃、友人を誘って学校の裏山にある廃病院を探索しようと提案した。この病院は過去にベトナム戦争で亡くなった人の遺体を収容していたことがあり、その幽霊が出るという噂が絶えなかった。その真偽を確かめようと思ったからだ。だが、彼と一緒に行った友人達は怖がって入ることができず、結局一人で入ることになった。
手術室や死体安置室と各部屋を廻ったが何も怪異なことは起こらなかった。少々の安堵感に包まれた彼は出口へと向かった。すると「ヒタ、ヒタ、ヒタ」と後方から足音が聞こえてくる。猫か犬だろう。そう思った彼は後ろを振り返った。それは全身を白い包帯に包まれた人間だった。四肢が異常に短く顔の部分は袋のような物で覆われている。さすがの彼もこれには腰を抜かしてしまった。近くにきた「それ」は仰向けになると、モールス信号を打つかのように首を上下に激しく動かし始めた。
彼は這うようにして外へ飛び出した。入口で待っていた友人達は彼の豹変振りに驚いたが、直ぐに全員で学校のグランドに運んでいった。何も訊ける状態ではない。そして彼が紙を握り締めているのに気が付いた。恐る恐るその紙を広げて見ると”Hold my breath as I wish for death.Oh please God, Wake me”と書かれている。家に帰って両親に泣きながら一部始終を話すと、父親は血相を変え、近くのお寺に連れて行かれた。
彼を見た住職は慌ててお払いをし身体中に塩を浴びせる。もう少しで「許されざる者」になるところじゃったな。「お前をそこに連れて行くのが俺だ」と言っておったぞと安堵の表情で彼に語ったそうだ。