友人の話。アトイさんと呼ばれるものが出る山道が、彼の高校の通学路にあったという。日が暮れてからそこを通ると、ヒタヒタ、ヒタヒタと、まるで裸足で歩いているような足音だけが、すぐ後ろから着いてくるのだと。アトイとは“後追い”が訛ったんだろう、と学生たちは考えていた。
ある夕暮れ時、怖がりの女学生が運悪く追いかけられた。その女学生、走って逃げようとしたせいか、慌てて荷物を落としてしまった。どうしよう?戻って拾った方がいいかな?焦って振り向くと、丁度落とした荷物の辺りで「ズシャァ!」と大きな音がした。目には見えないがどうやらアトイさん、荷物に躓いてこけたらしい。静寂が辺りを覆ったが、やがていつもの足音がヒタヒタと聞こえ、来た道をゆっくり引き返していったという。
その後しばらく、アトイさんは姿?を見せなかった。口さがない学生たちは皆、「バツが悪かったんだろうな」と噂したそうだ。