【雪山登山での怪奇体験】赤い布を結んだ無数の竹竿

ふかふかの雪に膝まで潜りながら、ラッセルが続いている。気温はマイナス10度前後だろう。動き続けるには手ごろな気温だ。西の空、高いところで雲が風に吹き散らされ、目に見える範囲で3箇所ほど、山裾から湯煙のように雲が立ち昇っている。天気が崩れる前に冬季小屋までは行けそうだ。竹竿を細く割り、赤い布切れをつけた目印を要所で立てながら来た。ここまで、何本使ったろうか。天候の急変で方向を見失うような事でもあれば、その竹竿が頼りだが、離れ過ぎず近過ぎずという加減が、案外難しい。振り返る。俺たちが歩いてきた経路に沿って、小さな赤い布切れがちらちら光っていた。

前方に冬季小屋が見えてきた。頭上、灰色の雲が広がり始めていた。晴天の名残など、すぐに失せてしまうだろう。小屋をどこかへ運び去ろうという勢いの風。壁に突き刺さり、めり込むような雪。吹雪の一夜というのは、やはりどこかしら不安だ。朝になっても吹雪はやまないが、多少は静かになっていた。小屋の外にあるトイレへ行こうと扉を開けた。

そこらじゅうで、小さな赤い布切れが光っていた。風に吹かれ、しなった竹竿の先、赤い布切れが激しく揺れている。その赤が、目にうるさい。見渡す限り、雪原は赤い布を結びつけた竹竿だらけだ。とても数え切れない。
トイレへの行き帰り、呆然とそれを見つめた。風が強まり、視界が霞んだ。あっという間に白一色の世界に引き込まれた。赤い布切れなど、もうどこにも見えない。晴れたら、俺たちが立てた竹竿以外、きっと残っていないだろう。小屋に戻ってから、そう思った。

『【雪山登山での怪奇体験】赤い布を結んだ無数の竹竿』へのコメント

  1. 名前:通りすがり : 投稿日:2018/01/31(水) 11:43:21 ID:
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    なにが怪異か分からない。
    あっという間に旗が見えなくなったのが、天気が急変しすぎ?目印に刺した旗が思ったより大量で、気付かないうちに同じ場所をウロウロさせられてたってこと?

  2. 名前:通りすがり : 投稿日:2018/01/31(水) 11:44:24 ID:
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    旗が大量に見えたのがそもそも幻なのかな?

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