『人間の間引き』に使われていた山の現在…

東京近郊、多摩丘陵とか、狭山丘陵とかの、山とも呼べないような山が年々宅地造成で消えていくのがしみじみ恐ろしい。オレの通っていた大学は八王子にあったんだが、オレは混雑した学バスが嫌いで、ハイキングコースのような山道を越えて通学する事が多かった。天気の良い日なんか缶ビール飲みながら歩いて、ホント、ちょっとした山歩きの気分が味わえて、楽しかったよ。

 

でも、後で知ったんだけど、その裏山は「間引きの山」と言われていて、昔は育てられない赤ん坊や、障害のある子を捨てる山だったらしい。ちいさな祠があったような気がするが、あれはその気の毒な赤ん坊達の霊を祀っていたのだろうか。昔から因縁のある山らしく、学生会館の裏を夜中に大勢のお遍路さんが歩いているとか(高尾山を中心とした霊場のひとつでもあったそうな)、電話ボックスに拭いても拭いても血の手形が付くとか…怪談話には事欠かない学校だったよ。

オレが卒業してはや20年近く経ち、その裏山も今ではすっかり宅地造成されてしまった。先日車で通ってみたら、祠のあった辺りにも、学生会館のすぐ裏にも小奇麗な一戸建やマンションが整然と建ち並んでいる。いわくを知っているオレは、あんな恐い場所絶対住みたくないぞう!と思うんだけどね。でもね、ひとりだと昼でも怖いくらいの鬱蒼とした山道を思い出したら、一寸哀しくなった。

自然破壊も怖いし、オカルト山に知らずに住む事も怖い。そして、東京近郊から、そう云う神秘的な山がひとつずつ減っていく事も、やっぱりしみじみ恐ろしい。

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