俺の地元はかなり田舎で、周りが山ばっかり。そんなわけで、近所の家も数件しかなかったんだが、その中に犬を飼っているS家があった。そのS家の家族は犬の世話をロクにせず散歩にも行かず、一日中繋ぎっぱなしだった。おまけに犬が死んだ後も、遺体を山に適当に捨ててた。そのままではあまりにも不憫なんで、近所のおじさんが見かねて、穴を掘って、その犬をちゃんと埋葬したんだ。
それから数ヵ月後。
その近所のおじさんが山でワラビを採ってると、遠くで白い影が動いているのを目撃したという話をしてくれた。そのおじさんが言うには、よく目を凝らしてみると、その白い影は犬の形をしてて、しばらくあちこちを走り回ったあと、すーっと消えていったらしい。糞ガキだった俺は、お化けだ~!!と怖がっていたんだが、そのおじさんが最後にポツリと「あの犬もやっと自由になれたんかな」って言って、怖がっていた漏れも嬉しいような悲しいような何とも言えない気持ちになったのを覚えている。