【登山怖】天気から逃げる大人数パーティを見た【遭難】

縦走路を歩き、いくつかのピークを越えていくと、稜線上で古い登山ルートと交差する場所がある。土砂崩れや風化により、今では誰も歩かなくなった道だ。遠く雲海に浮かぶ、うねりや波、島のような山々が細工物のようだ。そんな場所で、古いルートをやってくる10人以上のパーティを視界の端に捉えた。疲れてもいる。道は交差していて、向こうは大人数だ。立ち止まり、道を譲ろうとした。快晴の青空を見上げて一息つくと、雲が横切ったような、薄い影が視界のどこかを通り過ぎ、風を頬に感じた。

意識がぼんやりしていることに、不意に気付いた。わずか数秒前に感じた、大人数のパーティなど、どこにもいない。
「明日は、雨だな」
山小屋の親父は、その晩言った。
「あそこをな、あのパーティが通るとな、降るんだ。雨とか雪とか、そんなもんからな、逃げてるんだな、たぶん」
単一のパーティで、10人以上が一度に遭難した記憶はないというが、悪天候に巻かれて死んだ者なら、数え切れない。

風が出始め、小屋の扉が、どんと鳴った。
「ほら来た」
あの一行なのか、悪天候なのか、どっちだろう。俺と親父は、黙ってぬるい茶をすすった。

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