子供頃、小さな山の麓にある町に住んでいた。山へはよく遊びに行った。
級友がある日化石が出るところを見つけた!と言うので、理科に詳しい小学校の先生と、クラスの皆で出かけた。結果化石ではなく、何百年前かの植物が、粘土層に含まれているだけだった。それでも硬く固まった粘土の塊を割ると、中に葉っぱが入っている。面白くて、いくつかリュックに入れて持ち帰った。
その夜だった。夜中に便所に行く為、リュックを置いていた玄関の前を通ると、何かが居た。リュックの側、暗い玄関のたたきに人ほどの黒い影がゆらゆら立っていた。急いで電気をつけたが何もいない。薄気味悪くて、親を起こす事も思いつかず、部屋に跳んで戻り布団を被って寝た。
(化石に成りかけのものを、持って帰ってきちゃったからだ。)
何故かそう思った。そう思ったが、山に返しに行かずにリュックごと、こっそり燃えるごみに出してしまった。あれから20年程経つが、あれ以来怪異にはあっていない。