大雨で溶けるように崩れた斜面に、人骨が散らばっていた。崩れた地面の元をたどれば、頭蓋骨だけで、百近くあった。巨大な穴を掘り、そこへまとめて埋葬したようだった。
「埋葬じゃないよ。」
彼は言う。
「あれはね、生き埋めですよ。しかも、まとめて一気に百人近い人間を埋めたんですよ。」
近隣ではかつて、よく分からない建物の遺構が見つかったが、不便すぎて調査もままならず、捨て置かれた。地元の有志が集まり、露出した大穴から骨を拾い集めた。昔は庄屋を務めた旧家の旦那が、一番熱心に拾い集めた。なんとなく、頭蓋骨を並べ、同じ種類の骨ごとに並べると、不自然な感じがしてきた。右足の骨が、ひとつも出てこない。骨盤の股関節部分、右足の付け根はどれも傷ついたり砕けたりしていた。
やがて、朽ちた革袋が出てきた。袋は簡単に裂け、黒っぽい小片が大量にこぼれた。朽ちた鱗のようなそれを、誰かが爪だろうと言い出した。おそらく、三本の手足から剥いだ爪だ。右足を切り落とし、爪を剥ぎ、大穴に埋めたらしい。作業に参加していた皆が、同じことを考えていた。昔の庄屋の家では、代々、右足に障害を負うものが多い。先天性の障害もあった。事故によるものもあった。
話しながら、彼は、気味悪げにあたりを見回した。右足の骨は、とうとう一本分も出てこなかった。