昭和最後の年、息子夫婦の帰省の時の話です。混雑する列車と夜行バスに揺られ町の駅についたのは夜も11時を回った頃でした。町の知り合いのタクシーの運転手にお願いをし迎えに行って頂きました。息子夫婦の到着した駅からはタクシーで峠を越えて40分ほどかかります。運転手さんを含む3人は真っ暗な山道を進みました。途中、細い川にかかる橋の袂で息子は不思議なものを目にしました。
それはオレンジ色に揺れる「炎」でした。まるでキャンプファイヤーのようなゴウゴウとした炎が川沿いに揺らめいていたそうです。
「こんな時間に誰か焚き火でもやっているのか?それとも山火事か?」
タクシーを橋の欄干に停め「気味が悪い」という妻を残して運転手さんと2人で欄干から30メートルほど離れたところに揺れる炎を観察しました。炎の高さは身の丈ぐらいあったと言います。