【不気味】覗き込む若い女

友人から聞いた話。北海道の大学に進学した彼は、友人たちと頻繁にファミレスに行ったという。ドリンクバーとポテトフライをお供に時には朝まで語り明かす。誰にでも経験があるありふれた話だ。ある日いつものように会話を楽しんでいると、窓の外から店内を覗く人影に気付く。若い女だ。店内に知人でも探しているのか。初めは気にもとめなかったが、10分も動かないとあれば、やはり気になってくる。隣の友人の肩を叩くと、
「うん、気付いてる」
「変だよな?」
「あんま見ない方がよくないか?」
視界の端に捉えながらやりとりする。

視界の端でちら見していると、女が動いた。真横に、滑るように。普通人間が動く際には、必ず肩が動く。歩くにせよ、向きを変えるにせよ。女が見えなくなったあとはその話で盛り上がった。そして結論として「あれはこの世のモノではなかった」と。

先日、友人と食事をした。地元、鹿児島のファミレスで。食事中、やたら僕の背後に目線が流れる。そこで前述の話を聞かせてくれた。そして、「今また、あの女がいる」と。やはり以前と同じように窓の外から店内を覗いているようだ。僕はふり向けなかった。

そうしているうちに、彼はほっとした様に「いなくなった」と。北海道で見てから10年以上経過しているが、以前と全く変わった様子はなかったそうだ。容姿も、店内を眺めるたたずまいも。そしてあの、全く肩が上下しない人間離れした動き方も。

店から出る際、外から女がいた窓の付近を確認してみたが、植え込みになっていて、人が立てる状態ではなかった。そして窓の高さも僕の頭より上、窓から姿が見えるには少なくとも身長250cmは必要だ。やはり、そこには人ならぬモノがいたのだろうか。

幸い友人には前回も今回も、その後特に変わったことはないという。そして僕は厭な事を思いついた。女は、ああやって色々なファミレスを覗いて回っているのではないか。北海道から段々と南下してゆき、やがて九州に辿り着いたのではないかと。友人は偶々2度も遭遇してしまっただけ、だと思いたいのだが、ムシが良すぎるだろうか。そして女の今後も気になっている。鹿児島は本土のどん詰まりだ。これから沖縄に渡るのだろうか。それとも折り返して、また北へと向かうのだろうか。

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