学生時代の話。当時ミリタリーにハマってた俺は、大学の近くにあったミリタリーショップでアルバイトをすることにした。田舎にしては珍しく結構本格的なアイテムを扱っていて、ミリタリーファンの間でも評判の店だった。仕事とは言え大好きなグッズに囲まれて働くのは楽しく、掘り出し物が入荷すると店出し前に買わせてもらったりもして、ここでバイトしてよかったなあと思う毎日だった。
働き始めて一月ほどたったころ、バックルームの一角にずっと触られていない段ボールが一箱あることに気がついた。店長に「今日時間あるんで、残って仕分けしましょうか?」と声をかけたが、「そのダンボールは触るな」と言ったきり奥に引っ込んでしまった。
その後も、謎のダンボールは定位置に置かれたままだった。中身が何なのか聞いてみたい気持ちもあったが、なんとなくはばかられる雰囲気だった。聞けぬまま何ヶ月か過ぎたある日。店長が半年に一度の買い付けでアメリカへ行くことになった。1週間ほどの不在の間、ちょうど夏休みだった俺が店を任されることになった。
一人で店を回すなんて学生の俺には荷が重く、最初の二日間はあっという間に過ぎていった。3日目になり少し余裕が出てきた俺は、店の片付けでもして店長をいっちょ驚かしてやろうと思いたちバックルームへ入った。目に入ったのはあのダンボール。触るなと言われたけど、店長だって片付けが済んで嫌なことはないだろうと開けてみることにした。後に後悔することになるとも知らずに…。
ダンボールはガムテープで頑丈に梱包されていた。それらを剥がしとり蓋を開ける。次の瞬間、俺の目に飛び込んできたのは信じられない光景だった。きれいたたまれた血塗れの軍服。それも昔ついた血の染みではなく、まさに今ついたばかりのような、まだ湿ってぬらぬらと黒光りする血痕だった。
想像もしていなかった中身に飛び退いた俺はすぐさまダンボールに蓋をした。なぜあんなものが?この店には俺しかいないのに。店長は一体何を隠しているのか。パニックを起こしつつも、必死の思いでその日の勤務を終えた。店長に連絡しようかと思ったが、「触るな」というピシャッとした物言いを思うと言い出せず、残りの4日間ぬけがらのようになってなんとか店番をこなした。
買い付けから帰国した店長は店に来るなりバックルームへ直行し、俺を凝視してこう言った。
「箱の中身、見ただろう。」
嘘をついても仕方ないと思った俺は正直に全てを話した。店をきれいに整理して、店長を驚かせようと思ったこと。これから店に出す在庫だと思って開けたこと。最後まで聞いてから店長は「信じないかもしれないが」と前置きしこんなことを話し始めた。
店長が店を始めた7年前のこと。入荷した商品を仕分けしていた。ミリタリーものは商品に汚れが付着していることもあるので、店に出す前に検品してひどいものはメンテナンスを行う。多少の血痕ぐらいならそうめずらしいことではないらしい。その日入荷した商品も汚れているものがいくつかあり、慎重にチェックしていた。その中で、今しがたついたような濡れた血痕のある軍服が混じっていた。
かなり驚いたが、まあ洗えば落ちるだろうと他のものと一緒にクリーニングをした。しかし、血痕が全く落ちないばかりかいくら乾かしても乾かない。何日干しても、触れた手が血だらけになるのだ。気味が悪すぎるので箱に入れて封をし、バックルームに保存しておいたらしい。店長はそれ以来箱を開けてみたことがなかったので、7年たった今も同じ状況であったことにかなり驚愕していた。
その後大学を卒業した俺は、そのまま店に就職し今も働いている。買い付けにも何度か行かせてもらったが、現地でそういう話は聞いたことがないし、同じような状態のものに出会ったこともない。ダンボールはというと、梱包して同じ場所に置いたままだ。特に何も起きてないけど、お祓いとかした方がいいのかな?
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AzMTE2OTA
お祓いというかお寺に納めるなり靖国行。日本の軍服だったらね。外国のだったら大使館行きかなぁ。