小学校の帰り道に古い橋があって毎日通ってた。ある時、その近くで馬をみた。牛はともかく馬は珍しいなと思ってた。次の日から馬は数が増えて距離も近くなって、一緒に橋を渡って帰る感じになった。ある日、馬がいないから何となく橋の下の川をのぞき込んでみた。すると身体が折れたような、いびつな馬がたくさんいてこっちを見つめていた。それまで正体もわからん馬をなぜ怖く思わなかったのか、急に寒気がして家に走った。
途中の畑でじいちゃんがいたから、息を落ち着けながら馬の話をした。ここで待つよう言われて、家にいったじいちゃんは竹と紙垂(しで)とお米の紙包みをもってきて、一緒に橋のたもとの石碑にいって、お供えした。帰り道、じいちゃんから石碑は「馬頭様」だと教えられた。昔、橋の両脇は急な坂で、坂を登り切れず力尽きた馬が馬車に引っ張られて川に落ちて死んだらしい。あまりに被害が多かったから、石碑をたてて供養したとのことだ。動物の悪い念はすぐ人に伝わるから、俺が最初に会った馬達は悪いものではないとも言われた。玄関で頭から酒をかけられて、背中に塩を振って家に入った。それから馬は見てないが、お供え物は毎年かかしていない。