犬神憑きの家人が一瞥した食べ物は一瞬で味がまずくなるらしい

母が生まれ育ったのは山陰の片田舎です。その地域には代々犬神憑きの家があるそうです。他人が持っている美味しい物や酒をその家の人が見たとたん一瞬で不味い味になってしまうので。ごちそうをその家の者に見せてはならないと言われていたそうです。

その一族が犬神憑きだということはみんな知っていたそうです。本人達がそれを自覚していたかどうかはわかりません。村八分になっていた訳でもなくごく普通におつきあいしていたそうです。他人の皿の物を一瞥しただけで本当に味が変わってしまうので、婚礼や葬式の食事の場では隣席の人がため息をつくなんてことはあったみたいですが。憑かれた家の人自身に悪意はありませんが、犬神様は大変嫉妬深くひがみっぽい性質なので、勝手にやっているらしいです。

母は平凡な常識人でオカルトとは無縁の人ですが、この事を全く異様な事と思っていないようで、サラリとした思い出話として語ったので私は強く印象に残りました。

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