人に化けた動物の神様の祭事を目撃した話

本当にただの不思議な話です。15年くらい前、まだこの町が村だった頃。私の家の前には、庭、畑を挟んで、道が1本横切っている。家の入口から100mほど北は十字路になっており、右に曲がるとゆるやかな坂。登った先はT字路になっていて、左に行くと住宅地がある。

当時小学校低学年だった私は、庭に面した1階の和室で父母と一緒に寝起きしていた。その日も3人揃って、いつも通りの時間に就寝したと思う。感覚的には0時頃だったような気がする。ふと目が覚めた。表の道を、何かが行ったり来たりしている。祭囃子(まつりばやし)という表現が近いかもしれない。御輿(みこし)をかついでいる男達の掛け声のようなものが聴こえた。

それは、表を横切る道の300mくらいの区間を往復しているようだった。声が遠ざかったかと思えば、次第に近くへ戻ってきて、また離れて…を繰り返している。笛や鈴のような華やかな音はなく、聴こえるのは規則的な低い掛け声だけであったが、なぜか祭りの御輿を連想させる、そんな声。祭りの時期はとっくに過ぎているし、そもそもこんな深夜に御輿かつぎなどありえない。

隣の母を叩き起こして「ねえ何かお祭りみたいな音聴こえない!?」ときいたものの、「何も聴こえないよ…」とまた眠ってしまう。わけの分からない恐怖に襲われ、布団を被ってもなお、声はきこえ続ける。あまりに小心者だったため、いっそ障子を開けて外を見てやろうか…などという発想もなかった。仕方なしに布団の中で耳を塞いでいたらいつの間にか眠っていたらしく、何事もなく朝を迎えた。

その後、この夜のことは単なる不思議だった出来事としてなんとなく記憶していただけだったのだが…。何年か後、村の古い地名を知ろうという社会の授業で、地図が配られた。地図上では、普通の住所でいう××県△△町〇〇の、〇〇がさらに細かく区画され、そこに旧地名がしるされていた。私の家がある地区は、まさしく”祭囃子”とほぼ同じような意味の地名。

十字路を登った先の住宅地は、オカルトと縁のある(と言っては失礼かもしれないが…)ある動物の名が冠(かん)された地名。十字路から降りてきた動物の神様達が、表の通りで人に化けて祭事でもしていたのではないか、という話でした。

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