知り合いの話。彼の実家は、水道も引かれていない深山の寂村だった。十年程前の正月に帰った時のことだ。
その時、彼はお爺さんと一緒に焚き付けにする薪を集めていた。ふと気がつくと、お爺さんが一心不乱に空を見つめていたそうだ。きらきらと光る細長いものが、身をくねらせて飛んでいた。金色に光り輝く竜だった。竜は嬉しそうにくるくる回っていたが、やがて西方の空へ飛び去った。
それを見たお爺さんは哀しそうにこう言った。竜神様が行ってしまわれた。この村ももう終わりだな。それからしばらくして、その村の井戸は枯れたのだという。村人も次々とよその土地へ出て行き、今はもう廃村となっている。