みるみるうちに形が変わっていく「迷い森」

学生に聞いた話。ある研究者が海外の原生林を調査した時の話。現地の案内人が同行していたのだが、どういうわけか矢鱈に迷う。それを問い質すと「ずっと人が入らなかったので、森の形が定まっていないんだ」といった意味の返事が通訳を介して返ってくる。そんな馬鹿なことがあるか。

研究者は、地形や木の位置や形状に目印にして地図を作ろうとしたが、すぐに、それが不可能であることを思い知らされた。小さな池ほどもある巨大な水たまりが僅か数分で消え失せ、さっきまで大きく開けていた頭上の空間は、いつのまにか鬱蒼とした枝葉で覆われ、周囲の木立は、一寸目を離すうちに微妙に変化していく…。刻一刻とその姿を変える原生林に、研究者は眩暈にも似た感覚を覚えたそうだ。

後日、検証のために同じ場所で時間を隔てて撮影した写真を見比べてみたが、互いに全く別の風景にしか見えなかったという。

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