自分の家は山のてっぺんなんだけど、そこから隣の山の頂上に大岩がたくさん置いてあるのが見えるんだわ。実際は誰が置いたわけでもないのだろうが、この表現が一番しっくりくる。で、近所の爺さんに「あの岩は何?」って聞いたら、岩の中に老人が二人住んでるみたいな物語を聞いたんだけど、詳しくは覚えてない。で、どーしても会いに行ってみたくなって、行ったんだわ。
てっぺん目指して山道をひたすら登る。でもどうしてもたどり着けない。てっぺんは平原みたいになってるはずなのだが、いつまでたっても森の中。次々と頭の中に「本当にあった怖い話」シリーズのネタが浮かんでくる。泣きそうになりながら、実際ちょっと泣きながら、それでも1時間ほど登った所で、急に視界が開けた。やっと着いたか、と思ったが、大岩は無く、あるのは寂れた赤い鳥居。不思議だったのは鳥居だけだったこと。建物が見あたらない。
で、ここで分かれ道になってて、一つは再び森の中へ、もう一つは鳥居をまっすぐ行く道。暗い森の中には行きたくなかったので、まっすぐ行くことにした。鳥居をくぐり、進む。が、しばらく進むとこの道も森の中へ再び入っていった。この時点でもう出発から3時間は経ってて、へとへとで泣きながら進んだ。するとなんか集落みたいな所に出て、人もいたので、急に安心してしまいもっと泣いた。そんな私を見て、事情が飲み込めたのだろう、「ようきたね」と言いながら頭をなでてくれた。
そんで「もどろうか」と言ってくれたが、そこからは記憶が無く、気がついたら龍神岩の前にいた。龍神岩ってのは自分の町にある神社の池の真ん中にある馬鹿でかい岩で、土地の先祖が龍を退治して閉じこめた岩、らしい。その神社は自分が登った山とは反対方向だったが、疲れていたのか疑問に思うことなくそのまま家に帰ったら両親が泣きながら飛びついてきた。どうやら家を出てから2日経ってたらしく、やれ神隠しだ遭難だと、大騒ぎだったそうだ。
ちなみに今ではそのてっぺんの大岩には2時間もあれば行けるようになった。遺跡じゃないんだろうが、遺跡っぽい雰囲気が好き。町も一望できるし、今じゃお気に入りの場所です。それから、二度とそのじーさまの話は信用しませんでした。孫が出来たら話そうかと思う。