友人から聞いた、そのまた友人Sさんの話。私も今は山がに暮らしておりますが、SさんのところもT市とはなっているものの負けじ劣らず似たような山の中にあります。
Sさんの住む村の社では、ある社から御霊分けされた『こうじん様』が祀られている。その『こうじん様』は、村の中・各家々の周りをぐるぐる廻っているそうで、彼女の村では、玄関先などで何もないのに躓いたり転んだりすると「『こうじん様』に引っ掛かった」という言い方をするのだそうだ。実際、Sさんも何度か玄関先で「何故かわからないのに」躓いたり、転んだりしたことがあるという。以前、その『こうじん様』のお祀りが疎かになった時期があったという。すると、村の年寄りが次々と亡くなるということが起きた。いくら亡くなったのが年寄りとはいえ、一つの村から立て続けに何軒も葬式を出すのは異様なことである。
相次ぐ葬式に村の人々も「何かの障りではないのか?」と思ったらしい。そこへ『こうじん様』の本社(ほんやしろ)が、こんなことを言ってきたという。「御霊分けしたはずの『こうじん様』が、こちらに戻られていますが、何かあったのでしょうか?」…と。早速、『こうじん様』のお祀りをし直したところ、あれほど続いていた人死にがぴたりと止まったという。