うちは別に仏教徒というわけじゃないんだけど、知り合いに、やたらと寺や神社の神主さんがいる。親父が大学受験を控えた高校生だった頃の話だ。
いつもと違う環境で勉強しようと仲間3人と連れだって山の中にあるお寺に2泊3日で泊まりに行ったそうだ。真夏だと言うのに、やはり標高が高いからか、気温は肌寒いぐらい。食事が精進料理だったのが、育ち盛りだった親父たちには辛かったらしい。寺に到着した、その夜。本堂で勉強をしていた親父たちは、不思議な物音を聞いてしまう。ヒタ、ヒタ、ヒタと、まるで石の上を裸足で歩くような音。それが、さっきから、ずっと本堂の外から聞こえいる。そういうものを一切信じてなかった親父は、どうせ動物か何かだろうと勉強を続けていた。ちなみに、後の2人はガクブルだったらしいけど。
しばらくすると、本堂と廊下を繋いでいる分厚く思い扉がバンッ!と大きな音を立てて開いたかと思うと、しばらくしてから、再び大きな音を立てて閉まったと言う。その扉というのが、俺も一回見せてもらったんだけど、そんな思いっきり開く事なんて出来るような代物じゃなかった。建て付けが悪いのか、そう簡単に開く事もできないし、何よりもひどく重い。3人はいたたまれなくなって、住職さんの部屋に飛び込んだ。すると、住職さんは何度か頷いた後「檀家の方が先ほど挨拶に来られた。 本堂に立ち寄ったのだろう。別に怖がらなくても大丈夫」親父たちは、その夜は一睡もできず朝を迎えて、早々に山を下ったらしい。