神の水が湧く『五角の涸れ井戸』

高校卒業するまで四国の田舎に住んでたんだけど、家の近くの山の中に古い神社があった。近くに友達が住んでたのもあってよくその神社の境内で遊んでたんだけど、ある日、社殿の裏に上がってみると変な感じがする。社の裏手にこんもりと丘みたいになってる所があったんだけど、その丘ってのがよく見てみると正五角形の塚になってた。相撲の土俵なんかより二周りくらいデカイ正五角形の塚。子供ながらに変な形だと思いながらもその上で遊んだりしてた。また、社の横から山の奥に向かって獣道みたいな道が伸びてたんだけど、ずっと奥に行くと正五角形の石造りの井戸があった。いつ行っても冷たい綺麗な水が湧いてて、遊び疲れたらそこで水を飲むのが定番になってた。

少し話がズレるんだけど、俺は子供の頃、所謂『勘の鋭い子供』だった。道端にある祠から戌を憑れてきてしまうとか色々問題もあったんで、抑える為に修験道をやるようになった。修験道関連で奈良の吉野山の山伏さんなんかとも親交があるんだけど、ある時、五角形の塚&井戸の話を何気なくしてみた。数ヵ月後、本山から偉いお坊さんがやってきて神事が執り行われた。なんでも、天津神系の神格の高い神社だったらしく、出雲からも偉い方が来ていた。本来ならバチが当たって当然な遊びをしていた俺たちだけど、氏子で尚且つ子供だったから遊んでても赦されてたらしい。後で判った事なんだけど、五角形の井戸も枯れて長いこと経ってたらしく、とても水が飲めるような状態じゃ無かったらしい。神様が境内で無邪気に遊ぶ子供の為に水を湧かせてくれたんだろう、と言われた。

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出雲の偉い方って神様?出雲っていえば国津神系ですがあまり天津神系とか関係無いんですかね・・・
それよりどんな遊びしてたんですか?

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俺が聞いたのは、天照大神を祀ってると聞きました。かなり古い神社で、昔はもっと大きかったらしいっす。裏の五角形の塚の意味は教えてもらえませんでしたが、普通は立ち入りできないようにしてあると言われました。俺らが遊んでる時は木戸に鍵もかかってなかったし、普通に行けたんですがね…。遊びですが、それこそチャンバラからヒーローごっこから銀玉鉄砲の撃ちあいから色々っすね。社殿の壁によじ登ったり、塚の上で相撲取ったり…
子供の頃、道端なんかにある祠なんかの周辺に犬っぽい動物がいるのをよく見たんですよ。んで、その場所を離れて遊んでて、ふと気づくと少し離れた場所にいる。家に帰ってもついてきて、しまいには背中にくっついたりする。小さい頃からお世話になってたお婆さんにも、「この子は犬を引き憑けるから気をつけなさい」みたいに言われてたんですわ。不思議と、キツネだのタヌキだのってのとは縁が無かったっす。

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