【弓射の祭】神社家系に産まれた俺の話

あんまり詳しく書くと地域が特定されるので端折って書く。
私の生まれ故郷は中国山地の近くの山村で、じいちゃんもばあちゃんもその村で生まれて知り合ったらしい。んで、ばあちゃんの家系は神主で神社を持っている。毎年、秋には昔からの言い伝えにならって、ある祭りを行う。

去年の秋もその祭りをやった。内容は、『武者姿をした若者が、神社の境内から鬼門の方向にある木のてっぺんに向かって弓を射る』と言った内容で、去年はその弓矢を射る役目は俺がやった。
ちなみに鏃は鏑で、「ギューーーン」って音が出るだけ。その矢を拾った人は一年を無病息災で過ごせるって話がある。

去年の祭りのときのことだ。鎧を着て、烏帽子を被り、境内の真ん中で鬼門に向かって弓を射た。「ギューーン」って音がして、鬼門の方向にある巨木の上を超え、境内の外にまで飛んでいった。みんなが矢を拾おうと走って行くも、戻ってきた人の中にも拾った人はいない。中には「巨木の上を超えた辺りで消えてなくなった」って言う人も出てきた。なんともよくわからなかったけど、着替えのため社務所に行くと、その神社の神主をしている叔父さんが出てきて言った。
「木の上を矢が通ったとき、見えない何かに当たってドガって音を立てて消えたんだ。きっと良くないものがいたんだろうな」

後々聞いた話。
その神主をしている婆ちゃんの家系は、昔の中国地方の大名の毛利の家系で、神社の神様は八幡様だって事だった。

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後日談。
とりあえず、祭りは無事に終わって夜の打ち上げのとき。 総代さんってわかるかな?神社の世話を手伝ってくれる人なんだけど、その人に「来年も弓取りよろしく」って言われた。ちなみに、俺は霊感とかってものは殆ど無いけど、地元の祭りで神楽やったり笛を吹いたりしてるから、神様に好かれてるのかもなって年寄り連中には言われる。なんか、ありがたい話だった。

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