俺が小6の時にあった神隠し事件の話。
今から30年以上前の話なんだけど、俺の田舎で神隠しがあって村中大騒ぎになった。
小学2年生の女の子が、お寺の境内で他の子らと遊んでいて、その2年生の子だけいつの間にかいなくなった。
その日の夜、警察に連絡があって、村中の大人の男が集まって大捜索が行われた。
俺の親父も仕事から帰って飯も食わずに村の会館へ向かった。
母ちゃんは緊張した顔でどこかに電話してた。
親父が会館から帰ってきて、「ウチに班の子供集めることになった」と言い、また出ていった。
母ちゃんが強ばった顔で全部の部屋の電気を付けて回って、しばらくして近所の子供と母親が集まってきた。
子供と言っても中学生もいたし赤ん坊もいて、俺んちが一気にパンパンになった。
田舎特有の広い12畳の3つ居間が戸を外されて、36畳のでかい部屋が出来上がり。
各家から持ってきた布団が敷かれ、子供らがそこに寝かされた。
部屋の隅に母親が3人座って子供らを見守っていた。
俺は同級生の奴がいたからそいつの隣に布団を敷いて、しばらくそいつとヒソヒソ話をしていた。
「いなくなった子誰なんかな?」とか、「じいちゃんが神隠しやー!って鎌持って家飛び出してん」とか。
ヒソヒソ話だったが、見張ってた近所の婆さんが近寄ってきて、「しゃべらんとけ!」「子供の声はようとおる!」ってしゃがれた声で怒られた。
その日はなかなか眠れなかったけど最後には寝た。
俺の村には昔から神隠しの言い伝えがある。
数十年に一度の周期で、何人も子供が一晩でいなくなる。
変質者や事故などでは考えられないケースが多い。
昔から子供を数軒の家に分散し、集めて見張っていたが、見張りが一瞬目を離した隙に子供の数が半分になったという伝説もあった。
また、失踪した子供が見つかる場合もあった。
村は山の麓にあるんだけど、失踪した子供が山の中腹に数人倒れているのが発見されたケースもあった。
その日も大人の男は山を捜索していたそうだ。
次の日も昼夜捜索されたが、遺留品一つ見つからなかった。
幸いというか、その時はその女の子一人が失踪し、20年たった今も見つかっていない。
これはつい最近親父に聞いたんだけど、江戸時代の大飢饉があった時に、くさんの子供が村でランダムに間引かれ、そのあと神隠しが始まったらしい。
はじめは起きる間隔が短く、失踪する人数も多かったが、だんだん間隔も長くなり、人数も減ってきたらしい。