古ぼけた車で移動する怪異

北海道のとある峠道。
日差しがジリジリと照り付ける中、車内はクーラーが効かずにかなり暑くて俺はイラついていた。
峠に入ってしばらくして、前にえらい遅い車が居た。
60キロ制限の区間を30~40キロで走ってるのだ。
周囲に車はなく、2台でトロトロトロトロ走る…。
追い越し禁止区間を何とか1時間ほど我慢して耐え、追い越して家に帰ってきた。

いや~、暑かった。しっかしあの車、遅かったなあ!
…と思い返してて、奇妙だった事に気付いた。
追い抜く寸前、俺は後ろからその車内を見た。
その車は物が乱雑に詰め込まれた、今時見ない『古ぼけたライトバン』だったが、運転手の後ろ姿が異様だったのだ。

首から上が黒くぼやけた煙みたいで、ボウリングのピンみたいに細い。
頭の幅が5センチくらいで、ユラユラ横に動いてた。
俺はその時、運転しつつ毒づいてた。
「何だあのぼやけた頭は!妖怪かよ!」
追い抜きながら横から運転手をよく見ようとしたが、鏡みたいに窓が反射してて中が見えない。

追い抜いた後にルームミラーで後続車の運転席をチラチラ見た。
その車はフロントもリアも窓の部分は日が差してて明るいが、何故か車内はべったりと墨塗ったみたいに黒くなってて、運転手も闇に包まれてる様子で、どういうわけか判別つかず。
…と、ここまで思い出した。

興奮してたから不気味さに気付かなかったのか、何かがわざと気付かないようにしてくれたのか、いまだに判らん。
それからその車を見かけた事は一度も無い。2010年の事。

渡島半島のとある峠でのこと。
事故が多いわけでもなく、オカルトめいた話はほぼ無いという。

あれが妖怪としたら、フェリーで内地から来て、北海道を廻っているのかも??
勝手な予感だが、移動している気がした。

『古ぼけた車で移動する怪異』へのコメント

  1. 名前:アンリ=シャプロン : 投稿日:2016/08/23(火) 23:30:53 ID:
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    きっと気ままな一人旅の途中なんだろうね。
    その妖怪?怪異?さんは……。

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