俺の実家は小さい寺をやってて、親父が憑き物祓いや人形供養してるのを何度も見てたが、いままでで１番怖かったのが赤ちゃんの人形。ミルクとか飲ませるような結構デカイ人形だ。
当時10歳くらいだった俺は、夜トイレに起きると、人形部屋（供養する人形や、供養前の人形を集めた部屋）から、猫のような鳴き声が聞こえたので、部屋に入って電気をつけた。そこにはガムテープでぐるぐる巻きにされたダンボール箱があって、鳴き声がはその中からしているようだった。ガリガリという爪で引っ掻くような音も聞こえた。中に猫がいる！と思った俺は、ガムテープを剥がし、ダンボール箱を開けた。すると途端に鳴き声が止まり、中を見ると、そこにいたのは猫じゃなくて赤ちゃんの人形だった。寝かせると目をつぶる仕掛けの人形なんだけど、壊れているのか目をぱっちり開けて俺の顔を見ていた。俺は怖くなって逃げようとしたが、数歩後ずさったとこで腰を抜かし恐怖で動けなくなった。
ただひたすら箱を見ていると、箱がカタカタ揺れ、人形の手が出てきて、箱の淵を掴んだのが見えた。出てくる！って直感的に思った俺は、目を瞑って叫びまくった。そしたら親父が飛んで来た。人形を抱き上げ、人形に向かって「もう寝なさい」と言い、今度は木箱を持ってきて、中に入れ蓋を閉めた。その後、親父に「何をしてたんだ！」と酷く怒られて、「箱の中から猫の鳴き声がした」と説明すると、溜め息をついて、「今度から何かあったら、まず私に言うように」と言われた。人形の入った箱は、その日の夕方に近所のおばさんが持ってきたもので、まだ親父も中身を見ていなかったそうだ。次の日、その人形は燃やされる事になった。
寺に持ってこられた人形のうち無害な物は人形部屋で供養しているのだけど、動いたり声を出したりするものは危険だから、燃やす事にしているらしい。木箱に入っている人形に、お経を唱えながら親父が火をつけた途端に、中から昨日の猫のような声が激しく聞こえてきた。構わず親父はお経を唱えた。燃やした人形を出すと、原型を止めていない黒いプラスチックの塊になっていた。その塊は箱に入れて、無縁仏の墓に埋葬した。その後何も無く、今では都内で独り暮らしをしているが、夜中に猫の声が聞こえると、ビクッとしてしまう自分がいる。
ちなみに他にもいくつかエピソードがあって…。憑き物落としは何度か見たが、１番印象が強かったのが狐憑きの女の子。自分と同年代だったから気になってたのかも。
両親に連れられて客間に通されたその子は、友達とコックリさんをやった後からおかしくなったらしい。自分は狐だと主張するようになって、サラダ油を飲んだりするようになったらしい。でも、一見普通の子に見えた。別に暴れてるわけでもなく、うつむいてちょこんと座っていた。
でも、本堂に移って親父が読経を始めると、途端に酷い叫び声を出して、凄い勢いで裸足のまま外に逃げ出した。両親や親父が追い掛けて行くと、その子は真冬なのに池に飛込んだ。池から引きずり出して本堂に戻そうとしたら、その子は、
「私は○○神社のお稲荷様だ！」
「神の使いだ！」
「寺になんて用は無い！」
みたいな事を叫びまくっていた。その時のその子の顔は、顔が青ざめ目がつり上がり、本当に狐みたいで怖かった。
そして今度は逃げないように、ご両親が娘を左右から押さえ付けて読経を始めた。最初は何て言っているかわからない悲鳴をあげながら暴れていたが、親父がその子の胸元に小さな刀みたいのを押し付けたら（刺したんじゃなくてあてただけ）、気絶したみたいに動かなくなった。親父は「多分もう大丈夫」と言ったが、意識が無いのを心配したご両親が救急車を呼び、病院に運ばれたが、救急車の中で意識を戻し、今までの事（コックリさんをした後の事）を全く覚えて無かったそうだ。
次の日にその子とご両親がお礼に来て、何か高級なメロンを一箱貰った。そのメロンが滅茶苦茶美味かった事を忘れない。