友人宅での怪現象

中学三年の頃の話。
それぞれクラスは違うけど、仲良し五人組でいつも一緒だった。当時、僕等は学校が終わってから一度家に戻り、塾へ行くまでの間、順番に誰かの家に集合して、マンガ読んだりアニメを観たりして過ごしていた。

ある日、いつものようにA宅二階で五人が集まった。僕はマンガ本を、もう一人はお菓子を食べながら、そしてあと三人はテレビを?観てたと思う。その三人のうちYってやつがトイレへ行った。トイレは一階にあり、Yは六畳ふすまのその部屋を出て階段を降りていった。アニメの時間から察するに、夕方五時ごろだったと思う。Yがトイレに行ったと書いたけど、実はその辺は記憶していない。想像だ。しかし、確かに僕等のいる部屋から一人が出て行ったことには違いない。それがYだと言う事もハッキリしている。

Yが戻ってきた。ふすまを開けて「ただいま」。Aがそれに答えて「おう」。間髪いれず、Yがふすまを開けて「ただいま」 。Aがそれに答えて「おう」。僕等は「え?」と、顔を見合わせた。何故か好奇心旺盛なガキらしく、皆一様に愉快な事に興奮しているような顔つきだった。僕もとっさの事にマンガを置いて息を呑んだ。誰か二人が声をそろえた。
「二回目!」
同時に同じコトが連続して起こったのだ。Yがふすまを開けて「ただいま」。Aが「おう」。それが間をおかずに二回。例えば、Yが悪戯目的で一度ふすまを開けて、一旦閉じ、もう一度開けて「ただいま」だったら、ふすまを閉じてる時間が多少必要になる。また、Aはふすまを開けて「ただいま」と言うYを実際に目撃している。二回。

Aは寝そべってテレビを観ていたので、「おう」と言ったときはちらっとYの方を向いただけ。それも二回立て続けに。ただ、僕とお菓子を食べていたもう一人、そしてテレビを観ていたもう一人は、自分の行動が二回起こった自覚はない。ひょっとしたら、マンガを読んでいた僕などは、同じ所を二度(同じコマを)読んだかもしれないが、そういうことは別に意識するほどの事も無いので、二度読んだという自覚に結びつかなかったのだろうと思う。とにかく、僕等は盛り上がった。

しかしその晩、一人になって考えてみて、ぞ~っとした。あれは何だったのだろうかと。幽霊でも何でもなく、とにかく気味悪い。一番気にしていたのはYだ。もう何年も会ってないが、当時は、「あれは本当にわからない」とか、「確かに二度立て続けにふすまを開けたしなあ」とか。さらに、こんな事も言っていた。

「最初に開けた時、部屋の雰囲気がちょっと暗かったような」
僕はそこに手がかりがあると思ったのだが、あえて言及しなかったし、皆その話題にあまりふれようとはしなかったので、僕も忘れる事にしていた。実際、あれは不思議な感覚だった。

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