何年も憑いていた女性の正体

3~4年くらい昔の話になる。ある夏の深夜1時くらいだったと思う。母親に、明日の朝食のパンを買ってきて欲しいと頼まれた。 自分も小腹が減っていたため、コンビニに行く事にした。 自宅前の線路沿いの小道を、スクーターで走ってコンビニに行く。途中踏み切りを渡るのだが、行きの道中では何の異常もなかった。

一通り買い物を済ませて、来た道を帰る。すると、踏み切りの手前に人影がある。踏み切りの近くの街灯で、かろうじて女の人だとわかった。こんな時間に出歩いている人がいるとは、珍しいなと思った。田舎なので、深夜になると車も走っていないのだ。あまり霊の類は信じていなかったが、一瞬幽霊ではないかとドキッとした。その女性は踏み切りを渡ろうともせずに、踏み切りの手前で立っているだけである。気味が悪いが、その踏切を通らないと結構な遠回りになる。意を決して、その女性の横を通り過ぎた。

通り過ぎる瞬間気が付いたのだが、女性はうつむきながら何かブツブツ呟いていた。踏み切りを渡り、左折のため一度止まった。気になったので、もう1度女性の方を振り返ってみた。(消えてたらどうしよう?など、オカルト的なことを考えて)
女性はこちらを見たまま、先ほどと同じ位置に立っていた。「何だ。やっぱりちゃんとした人間だったか」と少し安心して、そのまま自宅に帰った。その日は朝早く起きなければならなかったので、すぐに床についた。

床についてから間もなく、電車の物凄い急ブレーキの音で飛び起きた。自分の部屋を出ると、その音で起きたのか、弟と父親が居間に入ってきた。「凄い音だったな」「どうしたんだろうな」などと少し話していたが、朝早く起きなければならないという事もあって、寝ることにした。

その日もいつも通り学校に行き、夕方には自宅に帰ってきた。夕飯の時間になり、新聞を広げていた父親が、小さな記事を指差して言った。
「今朝のブレーキ音、飛込み自殺らしいぞ。女の人が、貨物列車に飛び込んだらしい」
その時ドキッとした。まさかあの女の人じゃないよな・・・嫌なイメージが脳裏をよぎった。場所といいタイミングといい、そう考えるのが普通だった。あまり人の死というものを感じたことがなかったので、それだけでも洒落にならないほど怖かった。

それから何年かして、そんな事件も記憶の片隅で忘れ去られていた。ある日、母親が少しオカルト系が好きなだったこともあり、隣の市に住む、その近辺では有名だと言う霊能力者の自宅に行く機会があった。(霊能力者と言っても、職業にしているわけではない) 霊の類は信じていなかったが、面白半分でついて行くことにした。

6~7畳くらいのマンションの狭い1室に、6人ほどの人が集まっていた。しばらく、その霊能力者の体験談を聞いていた。 その後、集まった6人の守護霊を見ようという事になった。これは面白いことが始まったと、内心浮かれていた。10分ほどして自分の番が回ってきた。その霊能力者が、ジッと私の両肩の上あたりと、頭の上あたりを凝視した。間もなく霊能力者が口を開いた。
「貴方には御三方の霊がついています。まず先祖とおぼしき男性が1名。先祖ではないのですが、貴方の才能を伸ばしてくれている男性が1名。あと、自殺で亡くなっている女性が1名見えます。男性2名は守護霊ですが、女性の方はどこかで拾ってきたみたいですね。害はないのですが、憑いていても良いことないので払っておきます」
その言葉を聞いてあの事件を思い出し、恐怖が一気にピークに達した。

その場で払ってもらったが、何年間か一緒にいたかと思うと洒落にならなかった。何で俺に憑いてるんだよ~~ただ死ぬ前に偶然会っただけじゃないかと半泣きだった。そんなこんなで今に至るわけだが、ちゃんと離れていってくれたのか、霊感に無縁な私は不安でしょうがない。

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