霊園で見た気味の悪い男性の正体

私の家は、大きな霊園と複数の寺に囲まれて、ポツリと建っています。窓を開ければ、視界いっぱいに霊園が広がっています。そんな土地柄、霊体験は日常茶飯事。自分の部屋からリビングに出ると、テーブルに赤ん坊を抱いた女性が座っていたり。夜中、眠っていると誰かが体を揺さぶり、目を開けると、顔に火傷を負ったお坊さんが凄まじい形相でこちらを見ていたり。幼い頃からこの場所に住む私は、いつしか霊に対する恐怖心を無くしていきました。慣れというのは怖いものです。しかし、最近、私を再び恐怖のどん底に突き落とす出来事がありました。

ある夜、23時までバイトをした私は、初冬のピリピリとし肌寒いた空気を感じながらいつもの帰り道を歩いていました。家に着くには霊園の中を突っ切らなければならないので、人気のない薄暗い道を足早に歩いていました。霊園を半分程通り抜けた時、突然霊園の奥から『痛いよぉ』という男性の声が。いつも通り霊の声かと思ったのですが、どうやら肉声のようです。

無視する訳にもいかないので、真っ暗な霊園の中を携帯カメラのライトを照らして進みました。少し歩くと、再び声が聞こえます。『いだぃよ…ぉ…』さっきより声がかすれています。やばい、と感じた私は、目を凝らして声の主を探しました。すると、巨大なイチョウの木の下に人影が見えます。駆け寄ると、男性が木にもたれ、うなだれて座っていました。ひゅうひゅうと荒い呼吸で喉を鳴らし、少し見える唇は赤紫。私はしゃがみこみ『大丈夫ですか…?』と声をかけましたが、男性は沈黙して何も答えません。しばらくの間、男性のひゅうひゅうという呼吸音だけが霊園に響いていました。

このままでは埒があかないので『救急車呼びますね』と言って119番を押そうとすると、突如、ひゅうひゅうという呼吸が早くなり始めました。『ひゅうひゅう…ひゅ…ひゅひゅ…ひゅっひゅっ』状態が悪化したと思い、すぐに救急車を呼びました。10分程で到着すると言われたので、それまで私は待つことにしました。『もうすぐ救急車来ますから』私が言うと、男性の呼吸がさらに早くなりはじめました。

『ひゅっひゅっひゅひっ…ひゅひひっ…ひひぃ…ぃひひひっ』呼吸が早い?違いました。男性は笑っていたのです。『ぃひひぃ!ひはひひ!』首をぐるぐる回しながら、狂喜乱舞して笑っています。その様は正に地獄絵図。『ぃひひっ!首がぁ、くびぃひひ!』首を見てみると、喉仏のあたりがえぐられたようにして野球ボール大に陥没しています。あまりの凄惨な光景に、私は腰が抜けてしまいました。恐怖にうち震える私を、救急車の赤い光が照らしました。救急隊員が駆けつけ、笑い続ける男性をタンカに乗せて運んでいきました。

その後、彼がどうなったかはわかりません。あの光景は、しばらく私のトラウマになりそうです。

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