私が高校の時の話です。その日もいつもと同じように、ちょっとラジオの深夜放送を聞いた後で私は眠りました。時間にして午前1時をちょっとまわった頃だったと思います。私は夢をみていました。夢の中で、私は荒野にいました。それこそ、見渡す限り枯れ木とうっとうしい色の垂れ込めた曇天しかないようなところ。
「うっとうしいなー」と思いつつ、私は道を歩いていました。と、向こうに見えてきたのは、なぜか、くたびれたコートを着たサラリーマン風の男性でした。コートの色はベージュで、彼は下を向いた、いわゆるうつむいた格好だったのですが、私が見ているのに気づいたのか、ゆっくりこっちを向きかけました。
「まずい!」なぜか、私はそう思ったんです。「はやく目を覚まさなくちゃ!」
その次の瞬間には、私は目を覚ましました。
「はー…夢だったん…」
そう思いかけた私、何気なく足元を見てそれこそ心臓が止まりかけました。なぜかって?そこに、夢に出てきたおじさんが立っていたんです。夢と同じように、うつむき加減で…。やっぱりベージュのコートを着て…。「これは、夢!」と自分に言い聞かせて、無理に寝ましたよ。だって、そのままにらめっこしていたら、そのおじさんがこっちを向きそうだったから。
でも、そのおじさん、どこからやって来たんでしょう?そして、私、どこに行っていたんでしょうね…。何より不思議だったのが、どうしてその男性が『ヤバい』んだと私が思ったかってことです。もしかしたら、これが幽体離脱だったのかなー、と初めて思った体験でした。ただ、今冷静に考えてみたら寝ている私から見たときに、誰か足元に立っていたとしても、その人の足までは見えないですよね。だって、私の体がじゃまになるから。
その人はそれこそ頭の先から足の先まで見えたんですけど…。