中二の時、一緒に近くの市民プールに行った時のことです。その市民プールは、25メートルプールを囲む様に流れるプールがあり、端の方にサウナとジャグジー、そして45メートルと80メートルのスライダーがあります。この話は、全長80メートルのウォータースライダーで起こりました。
私とMは流れるプールで散々流れに逆らって泳ぎ、休憩時間に一旦プールサイドに上がると、ふくらはぎの筋肉がピクピクいっていました。二人して一息ついていると、フッとMがスライダーの方を見て「あっ」と言いました。「なになに?」
と尋ねると、Mはこう言いました。「今、だれかスライダー滑って行くの見た」
その時、プールは定められた休憩中でしたので、サウナとジャグジー以外は使用禁止となっていました。私とMは 「はは~ん。誰か監視員の目を盗んで滑ったな」と思い、どんなヤツか見てやろうと着水プールの前に座り込んで見ていました。ところが、5分待っても出てきません。「見間違いじゃない?」と言うと「そっかなぁ…」とMは頭を掻いていました。その瞬間、休憩終了のチャイムが鳴りました。
ワタシはスライダーを見ているうちに滑りたくなり、タッとスライダーに続く階段に駆けていきました。それを見てMも後についてきました。80メートルスライダーの滑降口には監視員しかおらず、誰も並んでいませんでした。Mは私を追越し 「お先!」と言うと滑っていってしまいました。監視員の人が苦笑いしていましたが、見てみぬ振りをして出発の合図を待ちました。
「ピッ」と笛が鳴り、ワタシは寝っころがり猛スピードで滑っていきました。視界が開け、豪快な水飛沫を上げて着水すると、私はプールサイドに上がりました。Mを見付け駆け寄ると、Mは青い顔をして固まっています。「どうしたん?!」
と肩を揺すると、Mはポツリポツリと話し始めました。
Mが滑っていく途中…『ダン!ダン!!ダン!!!』と何かがスライダーの筒(筒型のスライダーなんです)の壁伝いに這い上がってくるような音がしたのだそうです。その音は案の定、Mに近づいてきました。Mは体を倒し、滑り下りるスピードを上げて、一気に滑っていったそうです。そして視界が開け、着水する瞬間。視てしまったそうです。水の中で彼女にニタリと笑いかける、色白で黒い長髪の、女…。
そこまで話すとMはバッと立ち上がり、着水プールの前で何かブツブツ言うと、フゥと息をつき、トコトコ戻ってきました。「散らした。」さも盲腸を散らすかの様に言ったMの顔がとてもスッキリしていたのを覚えています。Mは凄いと思った瞬間でした。